
E&S(注)方式とは、ざっくり書けば、列車が到着したホームで荷役作業を行い、そのまま発車できるシステム。昔は、列車が貨物駅に到着すると貨車を切り離し、専用の荷役線に移動させて荷物の積み降ろしをしていた。複雑な入れ替え作業が必要で、E&Sの導入によって格段にスピードアップした。
広島貨物ターミナル駅は、東京行きの上りホームの方が下りよりも圧倒的に広い。
広操大橋(旧国鉄時代は、広島操車場だったため「広操」)と呼ばれる跨線橋(こせんきょう)を渡ってコンテナを積んだトラックが直接、ホームに乗り入れ、待っていたフォークリフトがコンテナを降ろす。それをコキ車と呼ばれるコンテナ用貨車に積み込むのだが、テキパキ作業をこなす職人技は見ていて飽きない。
広島貨物ターミナル駅は、広島県の西半分と益田市など島根県の一部を守備範囲としており、上り下り各48本の貨物列車が発着する西日本の要衝だ。昨年度の輸送実績は、発送約26万1千トン、到着約38万1千トンの計約64万2千トン。
1日当たりのコンテナ取扱個数は、発送が198個、到着が266個にのぼる。
東京をはじめ札幌、鹿児島まで直通列車が走っており、広島を9時33分に出る福岡発札幌行き2070列車が終着駅に着くのは、翌日の夜20時48分だという。全行程約43時間、広島からでもざっと35時間の長旅だ。もちろん、日本で最も長い距離を走る列車だ。
応接室でお茶をすすりながらサンケイ3号君が、かねての宿願を口にしたが、還暦を過ぎた身にはなかなか難しい。というより不可能だ。大昔のように貨物列車に車掌車はなく、機関車にはトイレがない。しかも運転中に運転士さんの隣で、モグモグやるわけにはいかない。
「それはダメだろう」と言いかけたところで、天の啓示を受けた。さっそく、JR貨物の甘木さん(仮名)に提案してみた。「カートレインを復活できませんかね。福岡―札幌で運行すれば大人気になりますよ」
カートレインとは、カーフェリーの列車版で、国鉄時代の昭和60年に汐留―東小倉間を走ったのが最初。車は貨車に積み込み、運転手はA寝台車などで一夜を快適に過ごすという趣向だ。なかなか好評で、本州―北海道間でも走っていたが、21世紀を待たずに消えてしまった。JR各社がそれぞれ独自の道を歩みだしたころで、復活には各社間の調整など高すぎるハードルがあるのは、素人でもわかる。
同乗する14時14分発1056列車の発車が迫ってきた。いよいよ「セノハチ」へ出発、は明日のこころだぁ!(コラムニスト 乾正人)