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大手企業を中心に、シニア人材を戦力として活用する動きが相次いでいる。背景には企業が直面する人手不足の深刻化があり、定年延長や処遇の改善など、豊富な経験や実績を再評価する機運が高まっている。
「バブル崩壊前に入社した世代が社内で占めるボリュームは大きい。この世代を戦力化しないといけない」と、住友生命保険の川口謙誠執行役専務は話す。
同社は令和3年に定年を60歳から65歳に延長し、「スペシャリスト」として経験を生かせる環境整備に注力。制度開始から5年、活用する社員は全体の9割に上る。
住友生命では就職時を「第1の入社」、会社の一員と自覚したときを「第2の入社」、還暦を迎えスペシャリストになるときを「第3の入社」と位置づける。第3の入社後の5年間は「これまでの蓄積を次の世代に引き継いでいくのが最大のミッション」(川口氏)。今年度の対象者は約380人だった。
60歳過ぎの社員の働き方は多様で、管理職に就く人、以前の部署に残り管理職を補佐する人、地方営業拠点の責任者になるケースもある。営業社員の年齢層上昇を受け、ベテラン社員の管理職就任が職場内コミュニケーションを円滑にする効果も見られる。
定年延長などの広がりには、65歳までの雇用確保が完全義務化された事情がある。ただ川口氏は「法律が後押しになった部分はあるが、リテンション(引き留め)をしなければ人手不足に陥る可能性があった」と言い切る。
シニア社員の意欲を引き出し、戦力化する企業は他にもある。三菱UFJフィナンシャル・グループは今年3月、傘下3社で令和9年度から定年を60歳から65歳に延長すると発表。三菱UFJ銀行では55歳を契機に給与を引き下げる仕組みを廃止する。同行担当者は「65歳まで評価や処遇に差異なく働いていただく。年齢にかかわらず成果を発揮できる人に報いる制度にしたい」と話す。
日本特殊陶業も60~65歳未満のシニア層を対象に、現役時代と同じ給与水準で働ける制度を導入した。
ニッセイ基礎研究所ジェロントロジー推進室の前田展弘上席研究員は「企業にとってシニア社員は重要な戦力。存在感はますます高まっている」と指摘。少子高齢化で人手不足が深刻化すれば「人材の奪い合いが起きる可能性もある」と見る。
内閣府の「令和6年度高齢社会対策総合調査」によると、「収入を伴う仕事をしている人」の割合は60~64歳男性で82.7%、女性で68.0%に上る。
65~69歳でも男性60.5%、女性56.6%で、60代後半でも6割前後が収入を得ている。社会情勢からこの傾向はさらに強まる可能性がある。
収入を伴う仕事をしている人に理由を尋ねたところ、「収入のため」が55.1%で最多。「働くのは体によいから、老化を防ぐから」が20.1%、「自分の知識・能力を生かせるから」は12.4%。高齢層ほど「収入のため」が減り、「健康維持」の割合が高まる傾向がみられた。