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路線バスの廃止や減便が相次ぎ、地域交通の確保が深刻な課題となっている。そうした中、長野県で地域の法人が保有する社用車100台を活用したカーシェアリングの実証実験が全国で初めて行われている。これは「交通空白」の解消を目指す国土交通省の地域交通DX(デジタルトランスフォーメーション)推進プロジェクトの一環。レンタカーのようでレンタカーではなく、既存のカーシェアサービスとも異なるという。一体どのような実験なのか。
11月10日から始まった実証実験は、国交省と信州大学発のスタートアップ企業「TRILL.(トリル)」(長野市)が、同社が開発・運営するカーシェアリングサービス「OURCAR(アワカ)」を使って共同で実施している。
アワカは、登録から貸し出しまで全てスマートフォンで完結する。法人は普段使っている車をオーナーとして登録し、貸し出し可能な日時を設定。車を利用したい人はユーザー登録し、設定された時間枠内で使用する。利用者は走行距離や利用時間、給油量などに応じて使用料を支払う仕組みだ。
このサービスは道路運送法に基づくレンタカー事業ではなく、自動車の維持管理にかかる実費をオーナーとユーザーが共同で負担する共同使用契約である。オーナーが利益を得るとレンタカーとみなされるため、使用料は実費の範囲に厳格に制限される。
具体的には、車両取得時の初期費用、駐車場代、自動車税、車検代などから30分当たりの実費を算出し、これを上限として使用料を決定する。今回登録された車両の多くは、最も短い30分間で約300円程度の使用料が設定されている。
車のキーは独自開発の外付けボックスを介して、24時間無人での受け渡しが可能だ。このボックスは古い車両にも取り付けられる点が特徴となっている。
「学生時代に車がなく、移動に課題意識を持っていた」と話すTRILL.の藤森研伍社長(28)は、「テクノロジーの力を使って車の所有を共有しながら、どんなエリアでも自由に行ける社会への実証の一歩にしたい」と意気込みを語る。
利用者の視点では大手カーシェアリングとほぼ同じだが、オーナー側にとってはどうなのだろうか。
長野市を拠点に情報誌を発行するフリーブックは、実証実験に先立つ7月に営業車1台を登録した。8月はお盆休みを中心に7回の利用があり、その後も毎月1回から数回の利用があるという。
登録車両の管理を担当する谷口晴香さん(34)は次のように話す。「会社で使う日が限られるので、有効活用してもらおうと登録した。いまのところ近くの2、3人の方が月に1、2回ほど利用している。駐車場に止めていてゼロ円よりは良いという程度の収入」といい、納得の様子だ。
実証エリアは長野市、上田市、松本市、原村の県内4市村。登録車両は乗用車だけでなく、貨物車両や軽トラックなど多岐にわたる。
同プロジェクトを担当する国土交通省総合政策局モビリティサービス推進課の内山裕弥課長補佐は、「法人には、車を使っていない夜間や週末も維持費がかかっている。その間にユーザーが実費を負担して利用してくれれば、法人もユーザーもウィンウィンの関係が成り立つのではないか。地域の輸送資源の活用で交通空白地域の移動手段になる可能性があるか、実証していきたい」と話している。
レンタカーの店舗は主要駅周辺などに限られ、レンタカー会社のカーシェアリングステーションも需要が見込まれる地域にしかない。一方で、公共交通が不足している地域でも、駐車場にとめられたままの車は数多く存在する。
ビジネスにならない小さな需要の地域でも、車の利用をあきらめている人が短時間だけ使えるようになれば、どんな社会変化が起きるのか。実証実験は2026年3月末まで行われる予定だ。(石毛紀行)