
国連総会は3月、大西洋奴隷貿易を「最も重い人道の罪」と位置づけ、賠償を求める決議を採択した。フランスは2001年に国内法で奴隷貿易を「人道に対する罪」と定めたが、国連決議では欧州連合(EU)加盟国と足並みをそろえて棄権した。国内では政府の姿勢の是非をめぐって論議が広がった。
フランス北西部ナントは、かつて欧州屈指の奴隷貿易港だった。ここで4月、歴史を伝える式典が行われ、18世紀に奴隷船で財をなした商人の子孫、ピエール・ギヨンドプランシエさん(86)が「先祖の罪」に謝罪した。
ピエールさんは「奴隷貿易が人種差別を生み、多くの人にいまも苦痛を与えている」と述べ、貿易拠点だった旧植民地ハイチの人道団体に5000ユーロ(約93万円)を寄付する意思を表明した。式典後、「心の重しが軽くなった」と笑顔を見せた。人権運動に参加した20代のとき、家族の歴史を知って衝撃を受けた。以来、やりきれない思いを抱えてきたという。
先祖は奴隷だったというデュドネ・ブトランさん(61)は「子孫に責任はない。だが、彼の謝罪は希望を与えてくれる」と称えた。現在は民間団体で、奴隷制の歴史を伝える活動をしている。国連決議は「大きな一歩」と評価する一方、「国が賠償を求めたもの。被害者の救済とは違う」と懐疑的な見方も示す。
国連決議はガーナが主導。大西洋奴隷貿易が、現代も続く人種差別や経済搾取につながったと明記した。アフリカや中韓を含むアジアなど123カ国が賛成票を投じ、反対は米イスラエルなど3票。棄権は日欧など52票だった。決議に拘束力はないが、賠償要求を突き付けられた欧州で衝撃は大きかった。