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現在、多くの小売業者が生成AIを接客現場で活用しようとしている。しかし、大半はマニュアルや手順書といった形式知にとどまり、現場スタッフの実務を真に支援できているとは言いがたい。
そんな中、スポーツ用品チェーンのヒマラヤ(岐阜市)は「アイダ つなぐ」と名付けたAI副店長を6月から全99店舗に導入した。
同社がこのAIに学習させたのは、店舗マニュアルといった形式知だけではない。創業以来掲げる「お客さま第一主義」という企業理念や、ベテラン社員が長年培ってきた接客の暗黙知も取り込み、マインドとスキルの両面からスタッフを支えている。
背景には、業務効率化に加え、50年にわたって受け継がれてきた企業理念が薄れつつあるという危機感がある。同社店舗運営部の金丸智功氏(部室長代理)とヒマラヤスポーツ本館店長の高島雅央氏(※「高」は「はしごだか」)が、開発の舞台裏を語った。
導入のきっかけは、多店舗展開にありがちな情報の分散だ。マニュアルやルール、動画資料が複数のシステムに散らばり、現場は素早い判断を求められる場面で対応に苦慮していた。金丸氏は「現場スタッフは接客中、素早い判断を求められる場面が少なくない。顧客対応をよりスピーディーに、かつ効率的に行うための解決策が必要だった」と振り返る。
さらに深刻だったのが「企業理念の風化」である。金丸氏は「当社には、創業者が掲げ、50年間大切にしてきた『お客さま第一主義』という強い理念がある。しかし、時代の変化とともに、スタッフの間で『そこまで過剰なサービスはしなくてもいいのでは』という意識が少しずつ芽生え、理念が薄れつつあることを危惧していた」と説明する。
「このままでは次の50年に理念を継承できない。まだ現場にベテランたちがいるうちに、その『思い』を伝えられるAIを作りたいと考えた」(金丸氏)。そこで同社はマーケティング部門の紹介でAI技術企業THA(東京都新宿区)と出会い、2025年9月から開発に着手した。