
毎日新聞MOTTAINAIキャンペーン事務局は、環境保護活動の象徴的存在であるケニア人女性、ワンガリ・マータイさんの生家を修復するためのクラウドファンディングを開始した。マータイさんは、資源を大切にする「もったいない」という日本語を世界に広めた功績で知られる。今回のプロジェクトは、老朽化が進む彼女の生家を保存し、その精神を次世代へと継承する拠点を整備することを目的としている。ノーベル平和賞受賞から20年近くが経過する中、彼女の足跡を辿る重要な場所が失われる危機に直面している。
マータイさんは1977年に「グリーンベルト運動」を創設し、植樹を通じて女性の地位向上と環境保護を同時に進める活動に尽力した。この長年にわたる草の根の取り組みが高く評価され、2004年12月には環境分野で初となるノーベル平和賞を受賞した。彼女の活動は単なる自然保護に留まらず、民主化や平和構築とも深く結びついており、世界中の人々に大きな影響を与えた。現在も彼女の遺志は、世界各地の環境運動の指針として生き続けている。
日本との縁も深く、2005年2月に毎日新聞社の招きで来日した際、彼女は「もったいない」という言葉の持つ深い意味に感銘を受けた。同年3月には国連本部で「MOTTAINAIを環境を守る世界の合言葉に」と呼び掛け、これを機に毎日新聞社が事務局となりキャンペーンがスタートした。消費社会への警鐘として放たれたそのメッセージは、国境を越えて多くの人々の共感を呼び、持続可能な社会への意識を高める契機となった。彼女の情熱は、日本とケニア、そして世界を結ぶ架け橋となったのである。
修復の対象となる生家は、ケニア中央部のイヒデという村に位置しているが、現在は住む人もおらず極めて厳しい状況にある。長い年月を経て土壁は崩れ落ち、屋根もはがれるなど、倒壊の危険性が日増しに高まっている。長女のワンジラさんは、この地を単なる遺跡とするのではなく、世界中から訪れる人々が勇気をもらえる「聖域」として再生させることを願っている。しかし、資金調達が難航する中で建物の損壊が加速しており、一刻も早い支援が必要な段階に達している。
今回のクラウドファンディングの目標額は300万円に設定されており、集まった資金はまず緊急性の高い生家の修復費用に充てられる予定だ。長女のワンジラさんは、支援を呼び掛けるにあたって次のように胸の内を明かしている。「日本と日本の方々をこよなく愛した母の原点が皆さんのご支援でよみがえれば、こんなにうれしいことはない」と話している。このプロジェクトの成功は、マータイさんが提唱した環境保護の精神を未来へ繋ぐための、新たな第一歩となることが期待されている。