
優秀な部下ほど、上司の質の低いフィードバックに敏感であり、「こんな指摘ならAIの方がマシだ」と内心で冷笑しているケースが少なくない。三流上司の典型的なNGは、完成度の低いアウトプットに対して抽象的な否定や印象論で終わらせることだ。これでは部下の成長は望めず、組織の競争力を削ぐ結果につながりかねない。
こうした課題を解決する糸口として注目されているのが、多様な職場で活躍する萩原雅裕氏が提唱する「たたき台」の活用術である。萩原氏は、未完成なアウトプットこそを積極的に評価の対象とし、それを上司の指導と部下の成長の起点とすることで、組織全体の作業効率を高める手法を提案している。
萩原氏の手法では、たたき台を評価する際に「構成の意図」「情報の取捨選択の基準」「仮説の立て方」という三つのポイントに着目する。これにより、上司は単なる結果主義ではなく、部下の思考プロセスを可視化し、的確なフィードバックを返すことができる。これこそが、仕事を停滞させないフィードバックの鉄則である。
このフィードバックは、部下の成長を大きく加速させる。上司が「なぜこのデータを選んだのか」といったプロセスに踏み込んだ質問を投げかけることで、部下は自らの思考の癖や強みを客観視できるようになる。これは、単なる作業修正ではなく、本質的な仕事の質を高める育成プロセスへと昇華する。
最終的にこのサイクルは、優秀な部下の離職を防ぐ強力な抑止力となる。三流上司のように「結果だけ」を見るのではなく、プロセスと人そのものを見る上司のもとでは、部下は自己効力感を高め、強い帰属意識を持つことができる。組織の未来を築くためには、上司一人ひとりがこの「たたき台」評価のスキルを習得することが不可欠であると言えるだろう。