
駅の応接室で鉄道談義に花を咲かせていると、時間はあっという間に過ぎていく。機関車へ同乗するため、必須のヘルメットをかぶり、工事現場でおなじみの黄色い安全反射ベストを身につける。すると、たるみきった腹もほんの少し引き締まったような気がして、不思議なものだ。
カープさんをはじめ、広島貨物ターミナル駅の皆さんに先導され、車に乗って跨線橋を渡り、上りホームへ向かう。
前回紹介したE&S方式では、トラックがコンテナを積んだままホームに乗り入れる。そのため当然、乗用車もホームを走ることができるのだが、その特別感は半端ではない。
上りホームには、既に福岡貨物ターミナル発倉賀野行きの1056列車が到着していた。
倉賀野駅は、高崎駅(群馬県)の一つ手前の駅。東海道線や武蔵野線などを経由して、明朝10時48分に到着する。全行程ざっと1300キロの長旅だ。
本日の編成は、コキ100系貨車21両(コはコンテナ積載可能、キは積載重量25トン以上を意味する)を挟み、先頭と最後尾にEF210形電気機関車を配置。全長約470メートル。旅客列車で最長の16両編成「のぞみ」(404メートル)より長い。総重量は約1050トン。コンパクトカーなら千台分に相当する。
積み荷は飲料水や車の部品など様々。広島からの発送品目では、積み合わせ貨物(複数の荷主の荷物をコンテナにまとめる方式)が最も多いが、それ以外では食料工業品が年4万3950トン(昨年度)でトップ。マツダのおひざ元ということで自動車部品も3万670トン(同)と多い。
13時44分、いよいよ「セノハチ」越えの最強助っ人、「ECO-POWER桃太郎」の愛称がつくEF210形302番がお出ましだ。静かに近づいてきて、最後尾の貨車にガシャリと連結された。深青に白いラインの車体は、優しくて強い桃太郎のイメージそのもの。300番台が他の210形とどう違うのか、サンケイ3号君が詳しく解説してくれたが、配色の違い以外はよくわからなかった。平成24年生まれで「セノハチ」のような急勾配を上れる性能を持つことはわかったが。
機関車乗降口に取り付けられた手すりをしっかり握り、軽快に運転台に上がった。昨年の常磐線編では、EH500形機関車には「よっこイショ!」という掛け声なしには上がれなかったが、今年は醜態をさらさずに済んだ。人間、やればできる。いよいよ、本当に出発進行だ。というところで、続きは明日のこころだぁ!(コラムニスト 乾正人)