
住宅価格や家賃が高騰する東京23区でも、空き家率は10%強に上る。そのうち約2割は放置され、市場にも出回っていない。こうした「放置空き家」は、実質的な住宅供給を減少させるだけでなく、近隣への外部不経済や地域の住宅価格高騰を通じて、社会全体の損失を生む一因となりえる。
なぜオーナーは空き家を放置するのか。経済学的に見れば、解体や改修にかかる費用よりも、現状のまま放置する方が個人にとっては「合理的」な判断となる場合が多い。固定資産税の軽減措置や賃貸経営のリスクを考慮すると、所有し続けるコストが低いためだ。
しかし、この個人の合理的判断が集積することで、地域社会には深刻な外部不経済が発生する。老朽化した空き家は景観を損ね、防災上のリスクを高め、害虫や不法投棄の温床となる。これらの影響は周辺住民の生活環境を悪化させ、健康被害や治安悪化にもつながる。
さらに、放置空き家の存在は周辺の住宅価格を押し下げる要因となる。研究によれば、近隣に放置空き家が一棟あるだけで、周辺の不動産価格が数%低下するケースが確認されている。逆説的だが、これが空き家をさらに増やす悪循環を生み、都市の住宅市場全体の効率性を損なう。
都市経済学の実証研究は、放置空き家が社会にもたらす損失を定量化しつつある。東京都内のある調査では、放置空き家の増加が地価の低下や税収減、さらには地域経済の衰退に波及するメカニズムが明らかになった。政策対応としては、空き家の利活用促進や譲渡・解体のインセンティブ設計が急務とされる。