
昨年、結党70年を迎えた自由民主党は、高市早苗総裁の下で今年、党是の憲法改正に向かって進み始めたかのようである。自民党はこれからどうなるのか。本書は結党時に遡(さかのぼ)って考える際の確かな手掛かりとなっている。
多くの自民党研究の中で、本書は綱領・党則・政治哲学要綱の分析の重要性を強調する。政治の現場に長年身を置いた著者の実感から政治とは政局と政策だけでなく、これら3つの基本原則をめぐる党運営との相互作用によって展開するものだからだ。
保守合同による新党の結成に向けての綱領の作成過程は、政策委員会の議事録を史料として、再現される。自由党の青木一男は「民族の独立再建」を強調する。日本民主党の福田赳夫と須磨彌吉郎も同様で、占領政策の是正としての憲法改正を求める。
その上で作成された綱領は、自民党を「国民政党」「平和主義政党」「真の民主主義政党」「議会主義政党」「進歩的政党」「福祉国家の実現をはかる政党」と規定する。本書はこのような自民党を「大戦後の英国保守党が労働党の政策を取り入れたのと同じように、進歩的保守主義」であると呼んでいる。
党則の方はどうか。総裁公選と政務調査会(党所属国会議員全員が政策決定に参加できる)の規定は、「真の民主主義政党」の証しである。
政治哲学要綱は政治学者の矢部貞治の影響が強い。原案の起草者は矢部の門下生である。英国を模範国としていた矢部は自民党に英国保守党と同様の役割を求めたのだろう。この文書が英国の思想家、エドマンド・バークの保守主義に言及していることも注目に値する。
こうして結成された自民党の原点に立ち返るならば、憲法改正は「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ」行われるべきだろう。他方で「駐留外国軍隊の撤退に備える」ことも今では現実味を帯びる。