
27日の夕刻、雨が上がった東京都内の空に美しい虹がかかり、多くの通行人らの目を楽しませる一幕があった。変わりやすい春の天候がもたらしたこの自然の演出に、足を止めて空を見上げる人々の姿が各地で見られた。どんよりとした雲が去った後に現れた七色のアーチは、都会の景色を一時的に彩った。
中央区築地5丁目の朝日新聞東京本社からも、午後6時ごろに南側の空に鮮やかな虹が浮かび上がる様子が確認された。高層ビルが立ち並ぶ都心において、これほどはっきりと色が判別できる虹は珍しく、観測した記者らもその美しさに息を呑んだ。夕刻の柔らかな光を受けて輝くその姿は、まさに都市のオアシスのような光景であった。
この情景に合わせ、記事では「うすかりし春の虹なり消えにけり 五十嵐播水」という一句が紹介されている。見ているそばから消えていってしまうような、淡く儚い春の虹の性質を見事に捉えた表現といえるだろう。この句が示す通り、春の虹は力強い夏のそれとは対照的な美しさを持っている。
春の虹は、夏の夕立の後に現れる強烈な色彩のものと比べると、どこか頼りなげで繊細な印象を与えることが多い。決して長く空に留まっているわけではないが、その淡さゆえに見つけた時の感動はより深く心に刻まれるものである。自然が見せる一瞬の表情に、日本人は古くから季節の移ろいを感じ取ってきた。
大都会の空に大きく架かった今回の虹も、時間の経過とともにゆっくりとその姿を消していった。忙しい日常の中でふと見上げた空に現れた七色は、多くの人にとって束の間の癒やしとなったに違いない。季節の変わり目を感じさせるこの淡い光景は、人々の記憶の中に静かに残り続けるだろう。