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茨城県神栖市の市長選をめぐり、県選挙管理委員会が「当選無効」の裁決を下した背景には、地元で長年親しまれてきた製菓店の屋号にまつわる2票の評価があった。28日に公表された裁決書から、市選管と県選管の判断がなぜ分かれたのかが見えてきた。
問題となったのは、投票用紙に「だんごさん」および「まんじゅうや」と書かれた2票だ。当選した木内敏之氏の実家は、明治創業の老舗「木内製菓」。現在も市内のスーパー11店舗で商品を扱い、年間23万個以上を販売。うち44%がだんご、23%がまんじゅうという内訳だ。木内氏側は「まんじゅうや、だんごやは市内に広く浸透しており、『木内』を指すものとして合理的だ」と主張し、立候補の際には市選管に屋号・商号の届け出も提出していた。
市選管は当初、この2票を有効と判断した。過去に新潟県の小規模自治体で、鍛冶屋を営む家の候補者に対して「カジ」と書かれた票が有効とされた事例などを参考に、「だんごさん」「まんじゅうや」が木内氏を指すと認めた。しかし県選管は、だんごやまんじゅうが木内製菓の商品として認知されていることは認めつつも、「だんごさん」「まんじゅうや」が木内氏の通称として広く使われていたという証拠は不十分と判断。さらに、新潟の事例は人口が神栖市の1割程度の小さい自治体であり、「人口が多いと同業者が多数いる可能性がある」として参考にならないと退けた。
一連の判断で、もう一つの焦点となったのが、落選した石田進氏の投票用紙だ。石田氏の票の中に、氏名の記入欄外に小さな丸印が記されたものが見つかった。県選管はこれを「他事記載」と判断し無効とした。この結果、当初は1万6724票で同数とされた両者の得票は、石田氏が1万6723票、木内氏が1万6722票となり、木内氏の当選が覆った格好だ。
日本の投票方式「自書式」は、投票者が自ら氏名を書くことで責任感を持たせるというメリットがある一方、秘密投票である以上、その記載内容の解釈は投票者に委ねられる部分が大きい。今回の裁決は、屋号や通称の扱い、さらには「他事記載」の線引きといった、選挙実務上の判断基準の難しさを改めて浮き彫りにしたと言えよう。