
カシオ計算機が、時計事業「G-SHOCK」の好調に加え、新規事業の創出に本腰を入れている。社長直轄の精鋭組織がその推進役を担い、経営の多角化を図る戦略が注目を集めている。
手のひらに収まるサイズで、モフモフとした毛並みが特徴の「Moflin」(モフリン)は、幅13cm、高さ9cm、奥行き18cmのAIペットロボットだ。「キュー、キュー」という鳴き声でなつく様子が愛らしく、2024年にカシオが自社のプリンター技術を応用して開発した。
モフリンは、よく話しかける人を飼い主と認識し、なでたり抱いたりする愛情表現をもとに、飼い主が好むしぐさを自ら学習する。接し方次第で400万通り以上の個性が生まれ、まるで生きている小動物のような反応を見せる。
精神ケア効果が期待される「アニマルセラピー」の役割も果たし、東京慈恵会医科大付属病院の小児病棟や無菌病床に導入されている。入院中の子供たちに寄り添うペットロボとして活用され、2025年12月末時点の累計販売台数は2万台を超えた。好調を受け、北米などグローバル展開も加速している。
また、モフリンに次ぐ新規事業として、2025年5月にはヒアリングアシストイヤホンブランド「earU」(イアユー)の第1弾を発売し、攻勢を強めている。耳をふさがずに周囲の音を聞き取りやすくする製品で、新たな市場開拓を狙う。
新中期経営計画では、2029年3月期に新規事業全体の売上高100億円、営業利益の黒字化を目標に掲げる。新規事業部の古川亮一部長は「モフリンを起点としてパーソナルウェルビーイング(心身の健康や幸福)領域での事業を確立する」と強調。既に成熟した腕時計、教育、サウンド各事業に次ぐ4本目の柱に育てる方針だ。古川氏は「今後も光学など既存の技術資産を用い新領域への拡張を進める」と展望を語った。