t>

連日35度を超える猛暑が続く中、野球界全体で熱中症対策が喫緊の課題となっている。100年以上の歴史を持つ甲子園球場を所有する阪神電鉄本社の重鎮からは「もうそろそろ、高校野球はお返ししていいのかもしれない」という衝撃的な発言が漏れ、夏の全国高校野球選手権大会の未来に大きな波紋を投げかけている。
22日にはさいたま市の「ロッテ浦和球場」で行われたロッテ―オリックス2軍戦が、猛暑のため四回途中でノーゲームとなった。ロッテの和田康士朗外野手(27)が四回先頭で空振り三振後、ベンチで体調不良を訴え埼玉県内の病院に救急搬送された。宮崎竜成内野手(25)も体調不良を訴えたため、球団は「熱中症の疑いがある体調不良者が複数発生したため、主催球団より審判に相談し対戦相手にも確認の上、中止を決定した」と発表した。
気象庁によると、この日のさいたま市の気温は試合開始正午時点で36.7度、午後2時24分には39.1度に達し、熱中症警戒アラートが発表されていた。異常な暑さが選手たちの健康を脅かしている。
プロ野球だけでなく高校野球でも異変が相次いでいる。20日には第108回全国高校野球選手権奈良大会で、春の選抜準優勝・智弁学園が奈良大付に6―9で敗戦。エース杉本真滉投手(3年)が七回のマウンドに上がる前に異変を訴えベンチ裏へ下がり、主将角谷哲人捕手(3年)が体調不良で六回守備から退き、多井桔平内野手(2年)は九回に足がつりチームメートに支えられてベンチに戻った。試合開始は午後3時25分、橿原市は午後3時に36度を記録していた。
文部科学省は2024年4月に熱中症対策ガイドラインを更新し「気温35度以上は運動は原則中止、31度以上35度未満は厳重警戒、激しい運動は中止」と明記した。厚生労働省のガイドラインも同様に、会社に従業員の熱中症防止を義務付けている。しかしプロ野球と高校野球は気温30度超えの猛暑の中、選手がリスクを背負いながらプレーを続けている。
日本高野連は24年8月から、熱中症対策と教員の働き方改革を目的とした7イニング制への移行を検討しているが、結論は出ていない。加盟校アンケートでは約7割が反対を示している。「9イニングを7イニングに減らしても酷暑の中でプレーさせることは同じ。抜本的な解決策にはならない。野球の基本的なルールを変えてしまうと野球ではなくなる。議論の方向性が違う」との声も上がる。
プロ野球の2軍戦では数年前からナイター開催が進んでいるが、ナイター施設を持たない球団も多い。それでも選手の健康を守るのは球団としての責務であり、7~8月の酷暑時期は2軍戦を基本ナイターに移行すべきだろう。
日本高野連は6月5日、第108回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕)における暑さ・健康対策を発表。夕方開幕や朝夕2部制の拡大、クーリングタイムの実施などを盛り込んだが、対策は不十分だとの批判が絶えない。
地方大会の開催時期を大幅に前倒したり、夏の甲子園の開催場所をドーム球場へ移したりすることも検討すべき時期に来ている。冒頭で紹介した阪神電鉄本社重鎮の言葉は、今こそ傾聴に値する。
植村徹也(うえむら・てつや)サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。