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深夜の病室で患者から罵声を浴びせられても、暴力を受けても、看護師たちは「耐えるしかなかった」。彼女たちの心を静かに蝕んでいくのは、体力的な過酷さだけではない。本記事では、感情労働という見えない重荷の実態を看護ジャーナリストの視点から報告する。
感情労働とは、自らの本心を抑えて業務上の望ましい感情を演じることを指す。社会学者のホックシールドが提唱した概念であり、看護現場では患者に安心感を与えるために、どんなに辛くても笑顔で優しい言葉をかけ続けることが求められる。
実際の現場では、暴言や暴力、セクハラまがいの言動、理不尽なクレームが日常的に発生する。終末期患者への対応や家族への説明でも、看護師は自らの悲しみや怒りをのみ込み、プロとしての対応を強いられる。その積み重ねが共感疲労や燃え尽き症候群につながっている。
この構造を支えているのが「白衣の天使」という神話だ。看護師は優しくて当たり前、患者のために尽くして当たり前という社会の期待は、彼女たちの感情表現の自由を奪う。さらに、人員不足や業務過多の中で感情労働の負担は評価されず、誰にも相談できずに孤立するケースも少なくない。
感情労働による心の消耗を防ぐには、その負担を可視化し、チームで支え合う文化を育てることが不可欠だ。看護師自身が弱音を吐ける場や相談窓口の整備、管理者の理解、社会の認識変化が求められる。看護師の心を守ることが、患者の安全と医療の質の向上につながるのである。