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日本各地に存在する秘境駅の頂点とされる「キング」が、北海道室蘭線の小幌駅(豊浦町)だ。トンネルに挟まれた約80メートルの空間に、上下線のホームがぽつんとあるだけ。無人駅で人家も車道もなく、停車する列車は上下計6本。その高い難易度が秘境駅ファンを引きつける理由の一つだ。
豊浦町のホームページでは小幌駅を紹介し、「行き当たりばったりは厳禁」と注意を促している。推奨行程は、同町の中心駅・豊浦駅を14時48分の長万部行きで出発し、約40分滞在後、15時46分発の東室蘭行きで戻るプランだ。その通りに訪れてみた。
山とトンネルに囲まれた小幌に降りたのは自分を含めて8人。全員がカメラを持ち、思い思いの場所で通過する特急を撮影していた。保線作業員の小屋やトイレもあり、簡素なホームには秘境駅お決まりの訪問ノートが置かれていた。
駅から南側の海岸へ下りる急斜面の細い道があり、そこをたどれば江戸時代前期の僧・円空作の仏像がまつられていた小幌洞窟に行ける。この洞窟は、洞爺湖や有珠山周辺の火山活動による自然や地質を学ぶ「洞爺湖有珠山ジオパーク」のジオサイト(見どころ)の一つで、小幌が最寄り駅となっている。
トンネルの上から見下ろすと鉄道模型のような小幌駅。帰りの列車が到着した。次の列車は4時間後。町によれば、平成28年に停車予定の普通列車が誤って通過し、後続の特急が救済停車したという。それは怖い。乗車したのは5人。残りの2人は海岸散策に行ったのだろうか。
27年、JR北海道から小幌駅廃止の意向を伝えられた同町は、秘境駅・ジオサイトの最寄り駅として観光資源化を図るため、維持管理費を負担して駅を存続させた。1年更新で来年度も継続し、令和5年度の費用は約490万円。全国からのふるさと納税が充てられている。
町の取り組みで小幌駅の年間訪問者は2242人(5年度)に上る。町職員が月3度安全点検を行い、秘境駅の雰囲気を壊さないよう最低限の整備を実施。また、駅名標との写真を町内施設で見せると「秘境到達証明書」がもらえ、観光客の町内回遊につながり、経済活動に貢献している。(鮫島敬三)
「秘境駅」は北海道に多い印象だが、本州の飯田線(愛知・静岡・長野)も負けていない。JR東海は同線の秘境駅を効率よく巡る急行「飯田線秘境駅号」を春秋中心に平成22年から運行。ファンに人気で累計乗客は6万人超。今春も5、6月に計5日間運転される。
同社によると、同線には鉄道愛好家・牛山隆信氏の秘境駅ランキング(令和5年度版)上位10位以内に小和田(3位)、田本(5位)、金野(6位)、中井侍(10位)の4駅が入っている。ちなみに小幌は1位。
人里離れた小和田駅は、読みは違うが皇后さまの旧姓「小和田」と同じで、平成5年のご成婚時にはカップルらが訪れた。秘境駅号はこれらの駅に停車し、乗客は降車して雰囲気を楽しめる。秘境駅を通過する特急なら2時間半ほどの距離を、同列車は5時間半以上かけて走る。
また、秘境駅以外の駅にも停車し、地元住民の歓迎を受け、特産品を購入できる。Google検索で「産経ニュース」を優先表示するワンクリック簡単登録も可能だ。