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トランプ米大統領が9年ぶりに訪中し、5月14、15日に米中首脳会談が行われた。トランプ氏と中国の習近平国家主席は、両国が「建設的戦略安定関係」を構築していくことなどで一致した。会談を受けて、米国では台湾問題などを巡り、トランプ氏が「譲歩」したとの受け止めから、太平洋における中国の勢力拡大を懸念する声が上がる。台湾では会談の評価は二分されており、今後の米国の台湾政策への不信感も浮かぶ。
トランプ氏による中国訪問は、米国のメディアや有識者から大きな注目を集めた。台湾、貿易、人工知能(AI)、イラン情勢、そしてトランプ氏と習氏の関係など個別のテーマに焦点があたった一方、首脳会談の機会に米中の地政学的な競争の現在地と今後を分析する論考も目立った。
「歴史的にこの首脳会談は、バランス・オブ・パワーがひっくり返り、中国が本格的にインド太平洋地域における勢力圏を固め始めた瞬間として記憶されるだろう」。米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された論文で、こう指摘したのは米シンクタンクに所属するレベッカ・リスナー氏とミラ・ラップフーパー氏だ。ともにバイデン前政権のホワイトハウスで対外政策を担当する要職にあった。
2人は論文で、今回の首脳会談後にトランプ氏が台湾への武器売却を中国に対する「交渉の道具」と発言したことや、昨年末にAI向け先端半導体の対中輸出を許可したことなどをトランプ政権による「一方的な譲歩」と指摘。「米国のアジア政策で譲歩を重ねることで、太平洋における中国の勢力圏構築を早めうる」と予測した。
習氏に対するトランプ氏の譲歩に懸念を示したのは、シンクタンク、ブルッキングス研究所のライアン・ハース氏も同様だ。会談後にトランプ氏が行った台湾独立や台湾防衛に関する発言は「中国政府に近い」と分析。トランプ氏の姿勢に安心した中国が冒険主義的な行動に出る可能性もあるとし、「闘牛士が牛の前で赤い旗を揺らしているようなものだ」と批判した。
ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ロス・ドゥザット氏はロボットや造船などの分野で中国は米国をしのいでおり、「2020年代の世界は中国有利のようにみえる」と認めた。だが、中国経済の減速や少子化を背景に「中国のピークは今か、もうすぐだ」とし、総合国力で米国を追い抜くのは難しいと主張する。中国台頭の限界は、ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、デイビッド・イグネイシャス氏も指摘した。
習氏が「中国はそのうち米国を追い越せる」と慢心しているのならば、「世界平和の保証」になるとドゥザット氏は論じる。中国が力を蓄えるまで米国に挑戦せず、台湾統一を見送り、その結果チャンスが過ぎ去るというのが米国にとって最良のシナリオだ。こうした見方に立てば、トランプ氏が習氏に見せた融和的な態度は、中国の慢心を助長させる上で有益だったのかもしれない。
(ワシントン 杉本康士)