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「前回の面会から3カ月もあったのに、話が全然進まないじゃないか。本気で出資するつもりはあるのか!」――三井物産の交渉担当者は、世界最大手エビ生産企業の創業者からこう叱責された。エクアドル最大都市グアヤキル近郊の沿岸部には、東京都の10分の1に相当する約2億平方メートルの広大な養殖場が広がる。運営するのは、グアヤキルに本社を置くインダストリアル・ペスケラ・サンタ・プリシラ(IPSP)だ。
三井物産は2018年頃からIPSPへの出資交渉を本格化させていた。しかし相手は一代で売上高2000億円、世界首位の養殖企業を築き上げた創業者である。三井物産側は資金力やグローバルなネットワークを武器に交渉を進めたものの、IPSP側の要求は厳しく、特に交渉が長期化している点について度々不満が表明された。
とはいえ三井物産も慎重にならざるを得なかった。大規模なエビ養殖への投資経験がなく、しかもなじみの薄い南米の地での案件だ。社内からは「本当に会社や経営陣は信じられるのか」「そもそもエクアドルに投資すべきなのか」といった反対意見が相次ぎ、調整は難航した。
三井物産がこうした川下分野への投資を加速する背景には、資源価格の変動に左右されにくい安定した収益源の確保という戦略がある。プロテイン(たんぱく質)事業を新たな柱に据え、世界各地のエビや鶏肉の大手企業に相次いで出資することで、食品バリューチェーン全体での事業拡大を狙っている。
同社はこれまでにも、ブラジルの鶏肉大手やタイのエビ加工企業などへの投資実績を持つ。今回のエクアドルのエビ養殖大手への出資は、南米市場でのプレゼンスを高めるとともに、世界的なタンパク質需要の増加を見据えた布石と位置づけられる。今後のさらなるM&Aや投資の動向が注目される。