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物流業界を足元から支えるトラック・バス用タイヤ。ジャパントラックショー2026で披露されたTOYO TIREの最新モデルと、その開発に込められた狙いを紹介する。
ジャパントラックショー2026。すべてのタイヤメーカーが出展しているわけではないこのイベントに、TOYO TIREが早くから参加しているのは、トラック・バス用タイヤの大切さを誰よりも理解しているからだ。
コロナ禍以降、物流量は凄まじい勢いで増えている。その一方で物流業界では、「2024年問題」が表面化。さらにドライバー不足で2030年には輸送能力が34.1%不足する「2030年問題」も控える。TOYO TIREは「タイヤでできることはないか」という視点から開発を進めてきた。良い製品が完成しても、知ってもらえなければ使ってもらえない。そこで、多くの物流関係者に製品を直接見てもらう場として、2年前からジャパントラックショーへ出展している。
タイヤによってできる最も大きな問題解決のひとつが、点検や交換の手間を減らし、長期間安定して使える製品を提供することだ。物流業界ではドライバーだけでなく、整備士の不足も問題となっている。手間がかからず、メンテナンス負担が少ないタイヤを送り出すことが重要になっている。物流問題は私たちの生活に直接関わる大きな問題であり、ここでは物流現場の課題解決に向けて開発されたTOYO TIREのトラック・バス用タイヤを紹介する。
「大型4軸低床トラックでは、特に前方2軸目のタイヤ、なかでもショルダー部に偏摩耗が出やすい傾向があるんです」。今回のジャパントラックショー2026で、筆者が最も衝撃を受けたのがこの指摘だ。なぜ前方2軸目のタイヤは減りやすいのか。そこには車両の構造が大きく関係している。
4軸低床トラックは、フロントの1軸目と2軸目が操舵するのが特徴だ。ただし旋回時には主に1軸目が車両の向きを変える役割を担う。そのため2軸目は1軸目に引っ張られる形で横方向に滑りながら旋回する。この引きずられるような動きが繰り返されることで、ショルダー部に負担がかかり、摩耗が進みやすくなる。もう一つの原因が路面の傾斜だ。道路は雨水を排水するため路肩側に向かって斜めに傾斜している。そのため左側のタイヤには右側より大きな負荷がかかりやすく、偏摩耗の原因になる。日本は左側通行で、特に負担が大きいのが左側の前方2軸目。そこに偏摩耗が集中しやすい。
偏摩耗は、タイヤ全体が均等に減る通常の摩耗とは異なる。タイヤを長く使うには、前後左右の位置を入れ替えるローテーション作業が必要だが、トラック用タイヤは大きく重量もあるため、現場にとって大きな負担となる。そこでTOYO TIREが生み出したのが、低メンテナンス性能重視型オールウェザータイヤ「M630」だ。
最大の課題であるショルダー部の偏摩耗を抑えるため、高剛性ショルダーブロックを採用。前方2軸目で負荷のかかりやすいショルダー部の剛性を高め、変形を抑えて偏摩耗を防ぐ設計だ。ショルダーブロックは幅を広げ大型化されているが、単に大きくすればよいというものではない。タイヤの端だけに負担が集中しないよう、幅や形状を細かく検討し、適切なバランスに仕上げている。
さらにセンター領域には小型ブロックを高密度に配置。接地面全体の圧力バランスを均一化し、ショルダー部に集中しがちな負荷を接地面全体で受け止めて軽減する。トレッドパターンにも工夫を施した。ショルダーブロックには屈曲サイプを採用し、接地面積を確保しながら接地圧のばらつきを抑える。これによりショルダー部を摩耗させるエネルギーを抑え、摩耗の進行を緩やかにしている。局所的な摩耗も防ぎ、タイヤ全体ができるだけ均一に減っていくよう設計されている。
構造面では、トレッドパターンが路面をしっかり捉えられるよう、高剛性ワイドスチールベルトを採用。これらの技術で、耐偏摩耗性能で高い評価を受けてきた「M646」と比べ、肩落ち摩耗量を61%低減した。「M630」はオールウェザータイヤで、さまざまな天候や路面状況に対応できる点でも物流現場にとって大きな安心感がある。
コロナ禍以降、宅配便を中心とした小口配送は格段に増えた。ネット通販は今やなくてはならない生活の一部だ。こうした荷物を最終届け先まで運ぶラストワンマイル輸送で活躍するのが、主に小型トラックだ。小型トラックは市街地を中心に走り、発進と停止を頻繁に繰り返す。タイヤにとっては非常に厳しい環境で、摩耗も進みやすい。そこで開発されたのが、小型トラック・バス用オールウェザータイヤ「DELVEX M635」だ。
耐摩耗性能と耐偏摩耗性能を高めるだけでなく、天候によって変化する路面状況にも対応できる設計だ。最近はゲリラ豪雨も増えている。「DELVEX M635」にはトラック・バス用タイヤ開発基盤技術「e-balance(イー・バランス)」を活用。大型ブロックパターンと高剛性ワイドスチールベルト構造でトレッド部の剛性を確保し、走行時の過度なブロック変形を抑える。積載量が少ない状態での走行も想定し、トレッド面中央部にワイドセンターエリアを設けた。これにより低荷重時でも接地状態を安定させている。
宅配トラックの場合、荷物が多い時と少ない時の差が一日の中で何度も起こる。さまざまな積載状態に対応できることは実配送現場で大きな意味を持つ。低荷重時にも摩耗が偏りにくい構造とし、従来品「M634」と比べて摩耗ライフを14%向上。ブロック表面に発生する段差状の偏摩耗も40%低減している。
天候変化への対応力はトレッドパターンに秘密がある。サイプと呼ばれる細かな切れ込みを設けることで、ブロック剛性を維持しながら雨天時や浅雪路でのトラクション性能を高める。路面状況が変化しやすい場面でも、発進時や制動時の挙動を安定させる。ドライバーに安心感を与えるタイヤに仕上げられており、日々の運転による負担軽減にも役立っている。
長距離輸送車を中心に広く採用されているのがリブタイヤだ。縦方向につながったトレッドパターンが特徴で、直進安定性と耐偏摩耗性能に優れる。新製品「M170」は、従来品「M125」で実績のあるリブ面積の配分を継承しつつ、トレッドパターンを改良して耐偏摩耗性能をさらに高めた。
トラクション性能や操縦安定性能も強化され、ドライバーの運転快適性を高めながら、整備士が車両管理する際のタイヤメンテナンス工数も減らす。開発には「e-balance」を活用。ショルダークローズドサイプと接地端サイプを配置し、ショルダーリブ内の接地圧を均一化。偏摩耗を抑えると同時に、路面からの入力を緩和し、操縦安定性も高めている。
主溝にはV字型断面形状を採用。溝の変形を抑えて接地圧の偏りを軽減し、小石が入りにくい構造とすることで溝壁や溝底の損傷も抑える。ドライバーだけでなく、点検整備を担当する整備士にとっても優しいポイントだ。
19.5インチ以上には4本の主溝、17.5インチには3本の主溝を採用するなど、タイヤサイズごとにトレッドパターンを最適化。車両条件に合った剛性バランスを確保し、高い耐摩耗性能を発揮する。従来品「M125」が発売されたのは1994年。30年以上使われたモデルの後継だけに、進化の幅は大きい。
ジャパントラックショー2026で提案した方向性を体現する新商品として、「ナノエナジーM976」を発売した。低燃費性能と耐摩耗性能を重視したスタッドレスタイヤ「ナノエナジーM966」に氷雪性能を加えた進化モデルだ。ワイドトレッド化で接地領域を広げ、ブロック内へ波状のサイプを高密度に配置してエッジ効果を確保するなど、トレッドパターンを進化させた。
トレッド面を路面へ密着させるため、コンパウンドも新しくなった。ブロック形状を保ちながら路面の微細な凹凸に密着させるには、柔らかすぎず硬すぎないゴムが必要だ。その性能を実現するうえで欠かせない特殊カーボンは、従来ゴムと混ざりにくい課題があった。この課題を解決したのがNCP技術だ。特殊カーボンをゴムへ均一に分散させることで氷雪性能に加え、低燃費性能と耐摩耗性能も向上させた。近年の急激な気象変化に対応し、幅広い地域で冬道の高い安心感を提供するスタッドレスタイヤが登場した。