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米国と中東イランの情勢が不安定な状況が続き、原油の供給に不透明感が漂っている。このため、都内の製薬会社は石油由来の原料見直しに着手した。石油由来の原料に依存せず、環境配慮も確立している企業への関心が高まっている。識者は「国内で供給できるものに置き換えることは日本の経済にとり、重要だ」と評価する。
財務省の貿易統計によると、2026年5月の中東から日本への原油輸入量は約397万キロリットル。前年同月と比べ約644万キロリットルも減少した。
武内製薬(東京都品川区)は、一部の化粧品・ボディケア商品に使う石油由来原料について、植物由来原料への切り替えに向けた試作と検証を進めている。小倉由渡代表取締役社長は「現行品の使用感をできるだけ維持できるよう取り組んでいる」と話す。
一部のプラスチック製容器やポンプの仕入れ価格は昨年から約10~30%上昇しているという。このため、今後の原料・資材価格や供給状況を見据え、代替原料や資材の検討も進めている。
「脱石油」へ、意外な原料を使った製品で注目を集める企業がある。断熱工事業のデコス(山口県下関市)だ。30年ほど前から、新聞紙をリサイクルしたセルロースファイバーが原料の断熱材「デコスファイバー」を製造、販売している。断熱事業部の田所憲一企画部長は「3~5月の問い合わせ件数は昨年と比べて約3倍に増えた」と明かした。
2022年に経済産業省が断熱材の種類別のシェアをまとめたデータによると、ガラスが原料のグラスウール(56%)や石油由来(34%)が主流で、セルロースファイバーは1%未満だった。中東情勢が混乱した影響で石油由来の断熱材が高騰し、セルロースファイバーの注目が高まったようだ。
新聞紙が持つ調湿機能で、湿度の高い日に「デコスファイバー」を施工した部屋に入ると、涼しく感じられる。エアコンの使用量を抑えられ、省エネの面でも期待が高まる。
伸光テクノス(愛知県一宮市)は、廃プラスチックを300~400度で熱分解して油を生成する「プラスチック油化還元装置」を30年ほど前に開発。国内外の大手メーカーなどに販売している。
代表取締役の木村護氏によると、従来は月に2、3件だった問い合わせが、5~7月は月100件以上に増えた。木村氏はこの状況を「(輸入する原油に)依存することに対し『自分たちでも何かやろう』という意識が高まったのではないか」と推察した。
「プラスチック油化還元装置」では、1回の処理(4~6時間)で5トンの廃プラスチックから5キロリットルの再生油を得られる。再生油は重油に近い状態で、ナフサや灯油の生成も可能だ。
木村氏は30年以上前、アフリカの女性が牛の糞(ふん)を乾かして燃料にしている映像をテレビで見て、廃棄物の再資源化を思い付いたという。
「ごみを価値のあるものに変えることで、地球の汚染を解決するきっかけになればと思っている」と木村氏は強調する。
原油などの資源輸入に依存せず、脱却する動きについて、原油市場などに詳しい日本総研の栂野裕貴副主任研究員は「日本の経済にとって重要になってくる」と語った。
日本が輸入する原油の約95%は中東からだ。「石油依存度を下げれば、(今回のような)中東情勢によって供給が滞るリスクを下げられる」と分析する。情勢が落ち着いた後も「何も考えず中東からの輸入に依存し続けるのは怖いので、企業側は石油依存度を下げる流れになるのではないか」と予測した。
石油を使い続けることは地球環境を脅かすことにもなりかねないため、「長期的に見ると、原油の輸入に依存し続けることは『世界情勢悪化による供給不足』と『地球環境の破壊』の二重の意味で日本経済にとってリスクがある」と指摘した。(長谷川あかり)