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国立情報学研究所(NII)は2023年より、日本語性能の高いオープンな大規模言語モデル(LLM)の開発に注力している。4月16日に開催された記者懇談会で、国立情報学研究所(NII)の黒橋禎夫所長は開発の意義について率直な思いを語った。黒橋所長は「日本のアカデミアでやる意味があるのか、という質問は常に受ける」と打ち明け、開発の背景にある危機感を示した。NIIは重みだけでなく学習プロセスまで公開する透明性を最大の武器としている。
NIIは2026年4月に独自モデル「LLM-jp-4 8Bモデル」などを公開したが、性能面では海外の最新クローズドモデルに及ばない面もある。米OpenAIや中国Alibabaの後継モデルと比較すると、計算資源の格差は無視できないレベルに達している。開発現場の実情について、黒橋所長は「ビッグテックに比べると3桁ほど少ない」と述べ、限られた予算の中での苦境を明かした。しかし、性能だけを追うのではない別の価値がそこには存在している。
なぜリソースが不足する中で開発を続けるのか、そこには「ソブリンAI」という概念が深く関わっている。黒橋所長は、クローズドモデルが収益性を優先することで、文化的側面やマイナーな領域が軽視されるリスクを指摘した。現状について「日本は収益上有用なドメインに入っている」としつつも、他国への依存には警鐘を鳴らす。将来的な供給停止や仕様変更に備え、自前で判断できる技術基盤が必要だという。
海外企業によるオープンモデルも存在するが、学習データや手法がブラックボックスである点は大きな課題として残る。黒橋所長は「企業主導のオープンモデル開発の見通しは不透明」と指摘し、開発チームの離脱などによる持続性の懸念に触れた。中身が見えないモデルをベースにするだけでは、出力のバイアス検証も難しく、科学的な知見も得られにくい。真の「Science for AI」(AIのための科学)には、プロセスの完全公開が不可欠だという。
黒橋所長は自国で技術をコントロールできる重要性を強調し、その意義を「私の気持ちとしては自分たちで判断できる土台を持っていること」と表現した。特定のモデルに依存しすぎる危うさを説き、「何の備えもなくQwenだけを使っていて、Qwenが無くなったらどうするのか。日本としてAIやデータをコントロールできるようにしておきたい」と結んだ。この取り組みは、単なる技術開発を超え、日本のデジタル主権を守るための重要な一歩となるだろう。