
インドネシアの首都ジャカルタ近郊ブカシで発生した通勤電車と長距離列車の衝突事故により、少なくとも15人が死亡し、数十人が負傷した。死者は全員女性で、押しつぶされた車両に挟まれるという共通した状況が確認されている。事故の背景には、線路上で立ち往生したEVタクシーが発端となった一連の混乱があったとみられる。
事故は通勤ラッシュの時間帯に発生し、多くの乗客で混雑していた通勤電車が、同じ線路上を反対方向から来た長距離列車と正面衝突した。衝撃で先頭車両が大きく変形し、特に女性専用車両として運用されていた区画が激しく押しつぶされた。このため、女性乗客が集中していたことが被害を拡大させた可能性が指摘されている。
インドネシア国鉄(KAI)の広報担当者は「女性専用車両は安全面での配慮から導入されたが、今回のような衝突時にはむしろリスクを高めた」と述べている。一方、現場近くにいたEVタクシーがバッテリー切れで線路上に停車、運転士が対応に手間取っている間に警報システムが作動しなかったとされる。
鉄道アナリストのアグン・ウィジャヤ氏は「老朽化した信号設備と、自動列車停止装置の未整備が背景にある。今回の事故はインドネシア全土の鉄道安全対策の欠陥を露呈した」と指摘。実際、ブカシ周辺の線路は複線化が進んでおらず、単線区間での対向列車衝突リスクが以前から指摘されていた。
政府は事故を受け、全国的な鉄道インフラ点検とEVタクシー運転士への避難手順教育の徹底を発表した。しかし、専門家からは「抜本的な信号システムの更新なしには同種の事故は繰り返される」との警告が出ている。遺族の一部は、なぜ女性専用車両が最も被害を受けたのか、その設計自体の検証を求めている。