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「パパはどこまで人がいいのかしら。東久邇さんがお辞めになったんだから、パパだって一緒に辞めるべきだったのよ」
連載小説「ファースト・ドーター、アンド…」第99回。林真理子氏が描くのは、吉田茂の長女で後に首相夫人となる桜子(さくらこ)の視点を通して見た戦後日本政治の舞台裏だ。今回は、終戦直後の混乱期、終戦連絡中央事務局でGHQと渡り合った白洲次郎の姿と、その背後にあった吉田茂の判断が焦点となる。
白洲次郎は、父・吉田茂の盟友であり、占領下で日本政府とGHQの橋渡し役を務めた。物語では、桜子が父の行動に不満を漏らす場面から始まる。東久邇内閣が総辞職した後も吉田が留まったことを、娘は「人が良すぎる」と批判するのだ。この台詞は、吉田の政治的忍耐と、家族から見た心情のギャップを象徴している。
吉田茂は、白洲が召集を忌避したという当時の噂について、実際の真相を娘に明かす。それは単なる逃避ではなく、連合国軍総司令部(GHQ)との交渉において、白洲が重要な役割を担うための計算された行動だったという。白洲は、自分の立場を守るためにあえて召集を避け、官僚組織の外からGHQと対峙する道を選んだのだ。
このエピソードは、戦後日本の形成期に、個人的な信念と国家の命運が交錯した瞬間を描いている。林真理子は、歴史的な事実とフィクションを巧みに織り交ぜながら、吉田茂と白洲次郎という二人の偉大な人物の人間関係と、その背景にある家族の視点を浮き彫りにする。物語は、桜子の成長とともに、彼女が父の政治判断を理解していく過程も描かれており、読者に歴史の奥深さを感じさせる。