
宮城県石巻市の自宅で昨年4月、高校1年生の長男を殺害したとして、殺人の罪に問われた被告の男(49)の裁判員裁判で、仙台地裁は28日に判決を言い渡しました。榊原敬裁判長は、被告に対して懲役3年執行猶予5年の判決を宣告しました。検察側は懲役6年を求刑していましたが、裁判所は被告が当時、心神耗弱の状態にあったと判断しました。この日は事件からちょうど1年にあたり、亡くなった息子さんの命日でもありました。
判決によりますと、被告は市内の集合住宅で、就寝中だった息子の背中をナイフで複数回刺したうえ、ロープや手で首を絞めて殺害しました。被告は離婚後、息子と二人で暮らしていましたが、不慣れな食事の準備などがうまくいかず、次第に思い悩んでうつ病を発症しました。精神的に追い詰められた被告は「自分は死んだ方がいい」「残されたらふびんな思いをさせてしまう」との思いを抱き、無理心中を図る形で殺害に至りました。
公判では被告の責任能力が焦点となりましたが、榊原裁判長は刑法39条2項を適用し、刑を減軽できる「心神耗弱」の状態だったと認定しました。裁判長は判決の中で、「実質的な争点は、心神耗弱の被告にどの程度重い非難ができるか」との視点を示しました。被告が息子の野球練習を熱心にサポートするなど、献身的に尽くしてきた事実を重く受け止めた形です。
また、判決では検察側が主張した「身勝手かつ自己中心的」という意見についても明確に言及されました。榊原裁判長は、食事の準備で悩んだことも「愛するがゆえの苦悩であった」と指摘し、検察側の主張を「被告人の心情を軽視し偏った視点から非難している」と退けました。最愛の息子を自らの手で奪った被告の絶望的な精神状態に寄り添う判断を下しました。
最後に榊原裁判長は、命日に法廷に立つ被告に対し、静かに言葉を投げかけました。裁判長は「息子さんの死とどう向き合うべきか、問い続けて」と諭し、社会の中で更生を目指すよう促しました。被告は判決の間、深くうつむいたまま裁判長の声に耳を傾けていました。悲劇的な結末を迎えた親子の絆について、法廷は厳しい非難よりも再起を求める道を選んだのです。