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ホンダの新型「インサイト」は、3000台限定で販売されるクロスオーバー風BEVだ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられたこのモデルをロングドライブで試した。
鮮やかな薄いブルーメタリックの外観は、実は「東風ホンダe:NS2」または「広汽ホンダe:NP2」の日本仕様。ホンダが中国で展開するBEVシリーズ第2弾で、2024年に発表されたものだ。
シャープな造形は現行の「ヴェゼル」や「シビック」に通じるが、フロントのHマークがなければ、どこのブランドか分からないほど独自性もある。
着座位置はやや高めだが、最低地上高は140mmでシビックとわずか5mm差。BEV専用プラットフォームでフロアが高いため高く感じるが、ペダル周辺に電池はなく、運転姿勢は乗用車そのものだ。
室内は広々としている。BEVのパワートレインはコンパクトだが、ボディサイズがCセグメントとしては大きく、全長4785mm×全幅1840mm×全高1570mm。シビックより225mm長く、40mm幅広く、155mm高い。
運転席からの眺めは地味で、先進性を強調しすぎていない。POWERボタンを押して起動するスタイルは、運転の儀式を重視する筆者には好ましい。
ボタンを押すと「じゃーん」という電子音が流れ、ステアリング越しの細長い画面に「READY」が表示される。やや見づらいが、ヘッドアップディスプレイがあるので問題ない。
センターコンソールのギアセレクターはホンダ車おなじみの四角いボタン式。見慣れたものに安心感を覚える。
「D」を押してアクセルを踏むと、パーキングブレーキが自動解除され、おずおずと走り出す。最初に感じたのは「キイーン」という高周波音で、加速にやや遅れがある。
ドライブモードが「ECON」だったため、重たい印象だったが、「NORMAL」に切り替えると、アクセル応答が改善。インバーター音が聞こえ、好印象に。
モーターは204PS、310N・m。前輪駆動だが、床下電池で低重心のためトルクステアはなく、4輪がしっかり接地している感覚がある。
乗り心地は悪くないが、もう少ししなやかさが欲しい。原因は荒れた路面と、おろしたてのタイヤ、特にコンチネンタル・ウルトラコンタクトUC6のランフラット構造にあると思われる。
高速巡航は驚くほど静か。BOSEのアクティブノイズコントロールが働いて、風切り音や路面騒音を抑えている。
「SPORT」モードにすると、BOSEスピーカーから人工サウンドが流れ、メーターが赤く光る。アクセル一定でもスルスル加速する感覚が楽しい。
ゆるやかなワインディングでは、クロスオーバーと思えないほどよく曲がる。ロールが少なく、アジャイルハンドリングアシストが旋回を助け、立ち上がりではホットハッチ的な速さを見せる。
都内では乗り心地も良好。ゼロ発進加速で信号ごとにリードでき、素直で欠点が見当たらないが、BEV特有のスムーズネスが無色透明に感じられる。
実用性は高く、白物家電のように使える。航続距離535kmも十分。中国製であることを考えると、東風ホンダのブランドで売る手もあったかもしれない。
文=今尾直樹/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=本田技研工業。
ボディサイズ:全長4785×全幅1840×全高1570mm、ホイールベース2735mm、車重1770kg。モーターは交流同期電動機で最高出力204PS、最大トルク310N・m。タイヤは225/50R18、一充電走行距離535km、価格550万円。
テスト車は2026年型、走行距離958kmから開始。市街地3、高速6、山岳1の割合で292.8km走行し、車載電費計で6.4km/kWhを記録した。