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人気ゲーム「スーパーマリオ」を原作とするアニメ映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」(4月公開)をめぐり、評論家と観客の間で評価が大きく分かれている。映画批評サイト「ロッテントマト」によれば、肯定的評価の割合は評論家が42%であるのに対し、観客は88%に上る。映画単体の完成度よりもマリオファンの心を掴み、ゲームへの関心を誘導する任天堂の戦略が功を奏した形だ。
本作は国内で4月24日に公開され、2023年公開の前作「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」に続くマリオ映画第2弾となる。
ロッテントマトの評論家スコアは専門家レビューのうち肯定評価が占める割合を示す。一方、観客スコアは一般客の評価を基にした別指標であり、両者は同一の尺度で作品を評価しているわけではない。
ゲーム原作の映画の場合、評論家は映画単体の完成度を重視する傾向があるのに対し、観客は「好きな世界観を期待通り楽しめたか」を優先しやすい。
マリオ映画に対する評論家の評価には、物語性や人物描写、独自性の不足といった、一作品として見た場合の不満が表れている。一方、観客評価の高さは、任天堂が狙う「既存ファンの活性化」と「新規層への訴求」が機能している証拠だ。マリオの世界観、音楽、アイテム、歴代ゲームを想起させる演出が、ファンや家族層に高い満足感をもたらしている。
同様の傾向は他のゲーム原作映画にも見られる。2022年2月公開のソニー作品「アンチャーテッド」は評論家41%、観客89%と大きな乖離を示した。作品としては既視感のある冒険映画と評されたが、観客には軽快なアクションと原作の雰囲気が支持された。
任天堂にとって重要なのは、映画単体の評価ではなく、映画をきっかけにゲームやグッズ、テーマパーク、さらに昨年発売した家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」へ関心を循環させられるかどうかである。
マリオの生みの親であり、映画プロデューサーも務める宮本茂氏は、過去の映画制作について「任天堂のゲーム機が行き渡っていない地域が(世界に)たくさんある。そうした地域の方にも任天堂を好きになってもらうという活動はとても重要」と語っている。実際、新作の世界興行収入はすでに1500億円を突破。観客スコアの高さは、任天堂が狙う層に作品が届いていることを示す指標といえる。
ゲーム原作映画の先行例として、カプコンの「バイオハザード」が挙げられる。ハリウッド実写映画版は6作にわたるヒットシリーズとなり、カプコン自身も「映画化によってブランド価値や作品名の認知が大きく高まった」と説明する。ゲームシリーズの世界累計販売は1億8300万本を超え、映画が海外でのブランド浸透を後押しした代表例だ。
ただし、任天堂とカプコンの手法は異なる。カプコンは基本的にハリウッドの制作力に委ね、映画の成功が結果的にゲームブランドを押し上げた。一方、任天堂は宮本氏らが制作に深く関与し、ゲームの世界観を自ら管理する。映画を主役にするのではなく、ゲームを中心とした知的財産(IP)の認知拡大ツールとして活用する戦略だ。
ゲームと映画をつなぐ任天堂独自の試みが今後どう展開するか注目される。(桑島浩任)
新作の評論家と観客スコアの乖離は、評価軸の違いだけでなく、作品のつくりそのものに由来する。前作も今作も、マリオという看板キャラクターのイメージを損なわないことに細心の注意を払い、無難なストーリーにまとめ上げている印象が強い。物語やキャラクターの扱いで冒険をすれば、監督の個性や作家性を重視する評論家の評価は上がる可能性があるが、ファンの反発を招く危険もある。
任天堂は1993年のマリオ実写映画化の失敗を踏まえ、今回は観客の満足度を最優先する方向に振り切ったと見える。上映前のゲーム広告や本編中のドット絵的な演出も含め、かつてマリオで遊んだ大人と現在の子供世代の双方に届く設計だ。映画賞的な評価より、知的財産(IP)戦略の一環としてブランド価値を高め、本業のゲームや関連商品へ関心を戻すことが主眼なのだろう。
前作と今作の成功を踏まえれば、次回以降に作家性の強いクリエイターをより前面に出し、批評性と娯楽性の両立を図る余地もある。(聞き手 桑島浩任)