t>

通常、政策提言では政党側が野心的な内容を主張し、政府側がそれを調整しながら現実的な政策に落とし込むのが通例だ。しかし、今回国会で議論された安全保障関連文書をめぐる動きは、その常識を覆した。自民党が6月に高市早苗首相に提出した「安保3文書」は、首相にとっては拍子抜けと映ったようだ。
「あまりの内容の開きに呆然(ぼうぜん)」――首相は6日の国会で、自民党と日本維新の会の提言の差にこう嘆いた。維新の提言は非核三原則のうち「持たず」「作らず」を堅持する一方で、「持ち込ませず」については「現実的検討を行うべきだ」と主張している。
一方、自民党の提言は世論の反発を恐れたのか、非核三原則について一切触れなかった。首相はかねて非核三原則の見直しを主張し、令和4年に岸田文雄政権が安保3文書を策定した際も「せめて『持ち込ませず』は外すべきだ」と訴えていた。自民と維新のどちらの提言が首相の意に沿うかは明らかだ。
この議論の背景には、日本の核抑止力のあり方をめぐる深い問題がある。米国の「核の傘」に依存する現状と、非核三原則という原則との矛盾が、依然として解消されていない。
政権与党である自民党が核議論から逃げ、野党の一部が踏み込んだ提言をするという逆転現象は、日本の安全保障政策の脆弱さを浮き彫りにしている。国民もまた、この重大な問題から目を背け続けているのではないか。