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ロシア産化石燃料への依存やエネルギー危機を背景に、EUでは脱炭素と安全保障の両面から「グリーン水素」への期待が急速に高まっています。再生可能エネルギー由来の水素は、製造時に二酸化炭素を排出しないため、気候中立目標達成の要として位置づけられています。同時に、天然ガスや石油の代替としてエネルギーの自立を図る手段としても注目を集めています。
この流れを後押しするのが、EUが打ち出す政策パッケージです。欧州委員会は2022年に発表した「REPowerEU計画」の中で、2030年までに域内で年間1000万トンのグリーン水素を生産し、さらに1000万トンを輸入するという目標を掲げました。実現のためには大規模な電解槽の導入や送配電網の整備が不可欠であり、官民を挙げた投資が本格化しています。
制度面でも、水素の「色」を定義し、グリーン水素の認証基準を明確にする動きが加速しています。EUは2023年に再生可能水素の算定ルールに関する委任規則を採択し、追加性の原則(新規再生可能エネルギーからの電力利用)や時間的・地理的対応要件を定めました。これにより、投資家や事業者はクリアなルールの下でプロジェクトを推進できるようになりました。
実際のプロジェクトも各地で立ち上がっています。オランダやドイツ、スペインなどでは大規模な電解槽工場の建設が進み、北欧では風力発電と連携した水素製造拠点が計画されています。また、南欧から中欧への水素パイプライン「H2バックボーン」構想も具体化しつつあり、域内サプライチェーンの構築が視野に入っています。
しかし、課題も少なくありません。現時点ではグリーン水素の製造コストは化石燃料由来の水素や天然ガスに比べて高く、需要創出には補助金や炭素価格の引き上げが必要です。また、貯蔵・輸送インフラへの巨額投資や、国際的な基準の調和も求められます。それでも、エネルギー安全保障の観点から欧州の政治的機運は衰えておらず、制度整備と技術革新の両輪でグリーン水素の普及は今後さらに加速すると見られています。