
「おこめ券」で話題となった令和7年度補正予算に盛り込まれた交付金を原資に、自治体が住民に商品券などを配布する物価高対策が本格化している。一方、防犯上の理由から配布を手渡しに限る自治体も多く、住民からは「なかなか届かない」との声も。玄関先への置き配はできないため再配達が増えるとの懸念もある。デジタルディバイド(情報格差)を念頭にデジタルでの配布を断念した例もあるが対照的な自治体もあり、専門家は検証が不可欠との認識を示す。
和歌山市は3月中旬から全市民約35万人を対象に1人当たり6000円分の地域商品券を発送。申し込みは不要で、受け取れば登録した飲食店やホームセンターなどで利用できる。利用期限は9月15日だ。「なかなか商品券が届かない。周りでも届いたという人は少なく、使用期限に間に合うのか」。5月上旬、同市の男性会社役員(58)が不安をにじませた。5月中旬にようやく手元に届いたといい、男性は「届いて安心だが、大型連休中に使えるとよかった」と話した。
要因の一つと考えられるのが対面を原則とする配布方法だ。和歌山市は今回、宅配便による記録付きの対面配達を前提としており、不在時の宅配ボックスの利用も認めていない。再配達などに要する時間も踏まえ、和歌山市は全世帯への配布完了に当初から「3カ月程度かかる」と示していた。
和歌山市では、新型コロナウイルス禍に配布した同様の商品券が郵送後にポストから直接盗まれる被害が続出。後に少なくとも約500枚(約50万円相当)に上る不正使用が明らかになり、再発防止が求められていた。アプリなどを用いた電子商品券としての配布も検討したものの、スマートフォンを持たない高齢者が少なくないといった事情を踏まえ見送った。市は配布状況を公表していないが、担当者は「3カ月以内には配り終わられる予定だ」と強調した。
同様の対応を取る自治体は少なくない。兵庫県宝塚市も盗難リスクを踏まえ、商品券の配布を手渡しに限定。デジタルでの配布を巡っては、以前から高齢者を中心に「使いにくい」との声があり紙での配布とした。和歌山市と同様、全戸配布には約3カ月が必要としている。
デジタルでの配布に積極的な自治体もある。全国の市区町村で最多の人口を抱える横浜市は4月下旬、全190万世帯に電子クーポンや商品券の受け取りに必要な2次元コードが書かれたはがきを郵送。クーポンなどの受け取りの際に個人情報に基づくパスワードの入力を求めることで、盗難や悪用の防止対策とした。市によると、はがきは約1週間で全市民に届けられた。またスマホを所持していない人に向けて、区役所に専用の相談窓口を設けた。