
母親が遺した15億円余りの巨額な遺産を巡り、相続税を免れようと過少申告を繰り返した兄妹の裁判が奈良地裁で行われた。被告人席に座ったのは、亡き母の不動産会社を引き継いだ長男(65)と、母と同居していた長女(57)の二人である。検察側は、自宅の地下室に隠された膨大な現金を意図的に隠蔽したとして、相続税法違反の罪を厳しく追及した。
法廷で行われた被告人質問において、兄妹は犯行の動機について赤裸々に語った。脱税の理由を問われると、二人は「少しでも納める税金を少なくしたかった」と声を揃えて述べ、自らの非を認めた。資産家一家が陥った「税を逃れたい」という強い執着が、嘘に嘘を重ねる泥沼の展開を招いたことが明らかになった。
事件の背景には、母親が一代で築き上げた莫大な資産背景がある。母親は奈良市内で不動産賃貸会社を設立し、土地の売買を通じて20億円以上の貸付金を会社に有するほどの財力を誇っていた。平成23年から30年ごろにかけては、会社所有の不動産売却益を自身への返済に充てるなど、地下室へ運び込まれる現金の原資を蓄えていたとされる。
母親が銀行預金から自宅の地下室に現金を溜め込み始めたのは、平成29年ごろのことだった。亡くなる半年ほど前、母親は長男を地下室へ呼び出し、きょうだい2人を前に「一生懸命稼いだ金だから(税務署には)申告するな」「ここに置いとけばバレへんから」と脱税を指示した。生前、母親は二人に対し「ここに置いておけばバレへんから」とも語っており、隠蔽は母親の強い意志によるものだった。
兄妹は母親の指示に従い過少な申告を試みたが、顧問税理士からは「現金は13億円以上あってもおかしくない。少なくとも5億円はあるはず」と鋭い指摘を受けた。追い詰められた兄妹は、さらに3億5000万円が見つかったと装い、相続財産を5億円として奈良税務署に申告するという姑息な手段を選んだ。しかし、地下室に眠っていた15億円という真実は、最終的に司法の場で白日の下にさらされることとなった。