
雑誌「上方芸能」の元発行人として知られる木津川計(きづがわ・けい、本名・坂本凡夫)さんが16日、中咽頭がんのため亡くなったことが分かった。90歳だった。葬儀は近親者のみで既に営まれている。木津川さんは長年にわたり、関西の芸能文化の振興に心血を注いできた。
高知市出身の木津川さんは、1968年に雑誌「上方芸能」を創刊した。同誌は関西独自の芸能や文化を深く掘り下げ、全国にその魅力を発信する貴重な媒体となった。2016年に惜しまれつつ終刊を迎えるまで、半世紀近くにわたって発行を継続した。その功績は、地域文化の保存と発展において計り知れないものがある。
執筆活動や編集作業の傍ら、後進の育成にも尽力した。1986年には立命館大学の教授に就任し、教壇から若者たちに文化の重要性を説き続けた。1998年には、その多年にわたるジャーナリスティックな活動が評価され、菊池寛賞を受賞している。木津川さんの鋭い視点は、常に多くの読者や教え子に刺激を与えてきた。
晩年には独自の表現活動である「一人語り劇場」の活動に精力的に取り組んだ。映画や芝居の筋書きを、巧みなセリフ回しを交えて紹介するスタイルは、多くの観客を魅了した。舞台の上で文化を「語り継ぐ」姿勢は、最期まで衰えることがなかった。表現者としての情熱は、まさに「上方芸能」そのものを体現していたと言える。
木津川さんの訃報を受け、関西の文化界には深い悲しみが広がっている。独自の美学に基づいた批評と紹介は、上方文化の質を高める大きな役割を果たした。その志は、彼が遺した数々の著作や雑誌のバックナンバーの中に生き続けている。関西の芸能シーンを支え続けた巨星の冥福を、多くの関係者が祈っている。
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