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夜の山に浮かび上がる送電鉄塔の赤い光。私たちが何気なく使う電気は、こうした山奥のインフラによって支えられている。しかし、その現場の裏側では今、クマの出没増加や山火事のリスク拡大という、暮らしに直結する問題が起きている。長年、山の現場を見続けてきた「山屋」たちは、この状況を「他人事ではない」と警鐘を鳴らす。
山屋とは、送電鉄塔の保守点検や資材運搬を担う山仕事のプロフェッショナルだ。重さ50キロにも及ぶ資材を背負い、急傾斜の山道を何時間もかけて登る。彼らは一般の人がほとんど立ち入らない奥山の現状を、誰よりも熟知している。その彼らが口をそろえて指摘するのが、「手入れされない山」の増加だ。
手入れが行き届かなくなった山では、奥山に十分な餌がなくなり、クマが人里近くまで降りてくるようになった。かつて里山は、人間の生活と山の生態系をつなぐ緩衝帯の役割を果たしていた。しかし過疎化や林業の衰退によってその緩衝帯が消え、野生動物と人間の距離がかつてないほど縮まっている。山屋たちは作業中にクマと遭遇することも増えたという。
放置された山は、山火事のリスクも高める。倒木や落ち葉が堆積し、乾燥した時期にはわずかな火種でも燃え広がりやすい状態になる。さらに林道や作業道が荒廃すると、消防車両が現場に近づけず、初期消火が困難になるという危険もある。気候変動による干ばつの頻発も、このリスクを一層深刻なものにしている。
「山を整備することは、私たちの暮らしを守ることにつながる」と山屋たちは訴える。送電線の点検や森林整備といった日常的な作業の積み重ねが、クマの出没抑制や山火事の予防につながるのだ。しかし、こうした仕事を担う人手は年々減っている。彼らが担う「見えない仕事」の重要性に、社会が目を向けるべき時が来ている。