
ホルムズ海峡封鎖により、日本の原油供給はかつてない危機に直面しました。特に中東依存度が高い出光興産は、緊急の調達や備蓄取り崩しでしのぎつつ、エネルギー安全保障の強化に乗り出しました。酒井社長は「この事態は日本のエネルギー脆弱性を露呈した」と述べ、即座の対応を指示したと振り返ります。
同社はまず、備蓄原油の取り崩しと緊急のスポット調達を実施しましたが、市場の混乱で価格が高騰しました。酒井社長は「供給途絶のリスクを現実として受け止め、迅速な意思決定が必要だった」と当時を語ります。この経験が、中東依存度低減への強力なドライブとなりました。
その後、出光は中東以外からの調達先多様化を加速し、米国やアフリカからの原油輸入を増やしました。また、国内製油所への積極投資を決定し、設備の効率化と安定供給体制を強化しました。酒井社長は「製油所は単なる燃料生産拠点ではなく、エネルギー安全保障の要だ」と強調します。
新中期経営計画では、従来の製油所閉鎖方針を撤回し、化石燃料への投資強化を宣言しました。これは脱炭素圧力が強まる中での大きな方針転換です。酒井社長は「現実的なエネルギーミックスを維持しながら、段階的にクリーンエネルギーへ移行する必要がある」と説明します。
この戦略転換により、出光は当面は化石燃料事業を拡大しつつ、水素やアンモニアなど次世代エネルギーへの研究開発も継続します。経営の舵取りは、エネルギー安全保障と脱炭素目標の両立という難題に直面しています。酒井社長は「両立は容易ではないが、日本のエネルギー未来を守る責務がある」と語り、今後の動向が注目されます。