暗黒時代の香港で味わう絆のスープ

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Kenji Watanabe
政治 - 03 May 2026

香港を訪れるたびに会う友人がいる。黎振鴻(30)はそんな一人だ。英語名はレオン。2019年の反政府デモで武闘派として活動していた若者である。

今年2月に香港に滞在中、あの年デモ隊と治安部隊が衝突した警察署近くで彼と会う約束をした。「米線」というライスヌードルの店に入ると、若者たちでほぼ満席。レオンは厨房にいた。

彼と初めて会ったのは2022年11月。デモで逮捕され実刑判決を受けた後に出所した若者たちの集まりを取材した時だ。

レオンは中国広東省生まれ。14歳で母親と共に香港に移住し、名門大学を卒業した。中国の歪んだ愛国教育を受けた経験から、香港の中国化に反対する学生運動に参加、卒業後の19年デモにも加わった。完全普通選挙の導入を要求した。

2019年11月18日、治安部隊に追い詰められたデモ隊の仲間を救うため、迫る警察車両に一人で立ちはだかった。火炎瓶を投げつけ、逮捕された。

2年余りの刑期を終え、2022年2月に出所すると、社会は一変していた。2020年6月に香港国家安全維持法が施行され、市民の言論・集会の自由が奪われていたのだ。「結局、われわれの戦いは何も得られなかった…」とレオンは絶望に襲われた。

そんな時、自分の将来を考えるよりも、同じく投獄された若者たちのことを思った。社会から忘れ去られようとしている彼らのために、既に出所した自分にできることは何かと考えた。

2019年のデモでは1万279人が逮捕され、そのうち2900人以上が起訴されている。

初めて会った際、レオンは囚人支援組織に所属し、収監中の若者に必要品を差し入れたり、精神的サポートを行っていた。

私が日本人だと分かると、「『孤独のグルメ』が大好きです」と人懐っこく笑いながら話しかけてきたのを覚えている。

レオンに転機が訪れたのは翌2023年。12月に会うと、「支援組織を先月辞めました。来月からイタリア料理店でパスタを作ります」と話し始め、私は驚いた。

辞めた理由を尋ねると、「若者たちも獄中の生活が分かってきたので」という答えが返ってきた。

デモ隊の仲間や収監された若者のためではなく、ようやく「自分」のために生きようとしているのだと、屈託のない笑顔を見て感じた。

それから2年余りが過ぎ、今年2月に会った彼は、ライスヌードル店の料理人であり、共同オーナーの一人になっていた。ついに自分の店を持ったのだ。

昨年5月にオープンした店の自慢は、地鶏と野菜を12時間かけて煮込んだ特製スープ。「化学調味料を使わないヘルシーで庶民的な店です」とレオンは胸を張る。店名『同湯米線』には、「同じスープを一緒に飲むことで同じ気持ちになれる」という思いを込めた。

店では出所した若者たちも雇っている。支援活動から完全に手を引いたわけではない。

店の前を警察車両がサイレンを鳴らして通り過ぎた。警察署は近い。警察関係者も客として来るに違いない。「大丈夫なの?」と尋ねたのは、以前彼が逮捕された場所に近づくと吐き気を催すと話していたからだ。しかし彼は気にしていなかった。執着から解放されたのだろう。

店内のBGMで日本語の歌が流れてきた。1990年にリリースされたCINDYの『私達を信じていて』。私は飛び上がりそうになった。<何度でも始められる><苦しくても叫んでいて><そこへ行くから>。希望と見えない絆の大切さを歌った曲だ。

実は、国安法施行後、暗黒時代の香港に生きる人々を記事にしてきた私に、読者の一人が手紙で「今の香港にぴったりの歌です」と紹介してくれたのがこの歌だった。レオンに選曲理由を聞くと、「歌詞の意味が深い。気に入っています」と微笑む。ミュージシャンの思いも、読者の思いも、そしてレオンの思いもつながっている。濃厚なスープを味わいながら、私も彼につられて笑みがこぼれた。

編集部注:この記事はAIを使用して作成されており、産経新聞の記事を元に、内容を変更せずにリライトしたものです。
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