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積極財政を掲げる高市早苗政権の目玉政策は、先端技術の成長産業化や経済安全保障の強化などを目指した17分野の戦略投資だ。官民一体で累計370兆円の投資を想定しており、今年の骨太の方針や成長戦略の柱の一つに据えている。
もちろん実効性を疑う声はある。官主導で戦略分野の勝ち筋を見極められるのか。有望分野があれば官に頼らずとも民間が自ら投資するはずではないか。懸念を挙げればきりがない。
さりとて、欧米や中国が政府主導で大規模な戦略投資に動く中、日本だけが民間任せでいいのか。「民間のことは民間で」との原則論だけでは済まない現実がある。問われているのは民間の事業活動をいかに効果的に後押しできるかだ。
例えば海外で事業を展開したい企業と、政府や公的機関との連携である。かなり古い話ではあるが、日米貿易摩擦時代の平成4年にブッシュ(父)米大統領が訪日した際、自動車のビッグ3首脳らを引き連れて米国製品を日本に売り込みをかけたことがあった。
ここまで露骨なトップセールスでなくても、首相や閣僚の外遊に大勢の企業人が同行することは多い。高市首相が7月初旬、インドを訪問した際には、両国首脳や150社以上の日本企業などが参加した大きなイベントも開かれた。
かつて同様の外遊に同行した経験のある大手商社の元首脳が「現地政治家に会えたおかげですぐにビジネスがまとまった」と驚いていたことを思い出す。
注目したいのは、首相や大企業が関わる大々的なものばかりではない。むしろ中小・地方企業を対象にした取り組みにもユニークで興味深いものがある。
その一つが、公的機関である国際協力機構(JICA)の中小企業・SDGsビジネス支援事業「JICA Biz」だ。途上国進出を目指す企業が現地調査や実証を行う際、JICAの豊富な現地人脈や情報などを提供し、事業化を後押しする制度だ。
企業の海外進出支援といえば、同じ独立行政法人の日本貿易振興機構(ジェトロ)が思い浮かぶ。国際協力を担うJICAの日本企業支援には多少の違和感もあるが、途上国の社会課題解決に貢献できる企業が対象と聞けば得心がいく。
例えば道路の損傷が目立つインドネシアでは、東京の企業が日本の工法で整備する実証事業を支援した。浸水被害の多いタイではプラスチック製雨水貯留構造体技術を持つ企業の進出を支えた。こうした案件の採択が年60件ほどある。
企業にとって大きいのは単独では難しい政府要人らへの接触がしやすくなることだ。JICAの後ろ盾は現地関係者と密接につながるための早道となる。
日本には、長年の政府開発援助(ODA)を通じて途上国で蓄積してきた「信頼」というソフトパワーがある。これをうまく活用することで、日本企業と途上国の双方に恩恵をもたらすのは極めて有益である。
中国の経済的威圧などを踏まえれば、日本が東南アジアなど新興・途上国との経済関係を強めるべきは当然だ。高市首相が重視する官民の戦略投資と同様、政府や公的機関は、中小企業を含む多くの企業が途上国で活躍できるよう、あらゆる手を尽くす必要がある。