
新生活を夢見た23歳のAさんを突然襲ったのは、稀少な自己免疫性脳炎――抗NMDA受容体脳炎でした。風邪に似た症状から始まり、異変が大きくなっていきます。日常が崩壊し、Aさんと家族は激しい葛藤に襲われます。Aさんの身に何が起きたのか。その壮絶な闘病の軌跡を追います。
最初はただの風邪だと思っていた。しかし数日後、Aさんは激しい頭痛とともに意識がもうろうとし始めた。さらに、理由のない恐怖感や幻覚に悩まされるようになり、家族は異変を感じて病院へ連れて行った。しかし、当初は原因がわからず、精神疾患ではないかと疑われたという。
症状は急速に悪化。Aさんは「頭を抱え絶叫し、激しく痙攣」するようになった。それはまるで映画『エクソシスト』の悪魔憑きのような状態だった。家族は憔悴し、何が起きているのか理解できなかった。ようやく専門医にたどり着き、血液検査と髄液検査で「抗NMDA受容体脳炎」と診断された。この病気は、体内で作られた抗体が脳のNMDA受容体を攻撃することで発症する自己免疫疾患である。
治療は長期にわたった。免疫グロブリン療法やステロイドパルス療法、血漿交換などが行われた。Aさんは一時的に人工呼吸器を装着するなど、命の危険にさらされた。家族は付き添いながら、わずかな回復の兆しに希望をつないだ。徐々にAさんの意識は戻り、手足が動かせるようになったが、リハビリは困難を極めた。
発症から約1年後、Aさんは日常生活を取り戻しつつある。しかし、記憶の一部を失ったり、疲れやすさが残るなどの後遺症と向き合っている。Aさんは「この病気をもっと多くの人に知ってほしい。早期発見・治療が重要だ」と語る。家族の支えと医療チームの尽力が彼女を救った。抗NMDA受容体脳炎の認知度向上が、同じ苦しみを味わう人を減らすことにつながると願っている。