
今週も米大統領はイラン戦争の停戦合意が「大筋交渉中」「最終調整段階」などと喧伝(けんでん)しているが、筆者はもう疲れてしまった。仮に合意文書ができたとしてもそれは「一枚の紙」に過ぎない。中東の悪魔は常に「細部に宿る」と思うからだ。
今次戦争につき、ちまたでは「勝者はロシア」「中国は高笑い」「欧米関係は悪化」「東アジアは苦境」などと報じられた。だが、ここで一つ大事な国を忘れてはいないか。中国とほぼ同じ人口で、中東により近く、約2億人ものイスラム教徒を抱え、エネルギー「湾岸」依存度の高い国、そう、あの大国インドである。イラン戦争がインドに及ぼす悪影響は日本以上に深刻らしい。
インドは中東からの原油輸入に大きく依存しており、ホルムズ海峡封鎖ともなれば経済的打撃は計り知れない。また約800万人の出稼ぎ労働者が湾岸諸国で働き、送金も国家収入の重要な柱だ。戦闘拡大で彼らの安全と雇用が脅かされれば、インド国内にも波及する。
こうした脅威を背景に、日本とインドの連携が改めて注目される。両国はともに湾岸地域の安定を必要とし、エネルギー安全保障やシーレーン保護で共通の利益を持つ。「日印」協力は単なる二国間枠組みを超え、湾岸全域でのパートナーシップへと発展する可能性がある。
停戦合意の真偽はともかく、イラン戦争後の中東秩序を考える時、日本はインドとの協力を抜きに語れない。両国が湾岸で「多くの利益を共有するパートナー」となる道筋を、今こそ具体的に描くべきだ。筆者はそう確信している。