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電子レンジの中で生地が膨らむ様子を見ながら「ちゃんとケーキになるのかな」と胸を躍らせた人もいるだろう。そんな平成のおやつ「モコモコ」が、12年ぶりに帰ってくる。
永谷園が8月3日に発売する「マグカップでふっくらケーキ!モコモコ」(バニラまたはチョコ、希望小売価格・税別130円)は、2000年に発売し、2014年に販売を終了した商品の復活版。売られていない期間も、ファンの声は途切れなかった。
永谷園によると、終売後の10年間でお客様相談室には500件以上の再販希望が寄せられた。SNSでは再現レシピが投稿されるなど、販売終了後も消費者の間で商品は生き続けていた。
次々と新商品が登場する食品業界で、終売から10年以上経っても「もう一度食べたい」と思われる商品は珍しい。モコモコが忘れられなかった理由の一つは、単なるお菓子ではなく、作る時間そのものが楽しめる存在だったことにある。
作り方はシンプルだ。マグカップに卵1個と粉を入れて混ぜ、電子レンジで約2分加熱する。生地が少しずつ膨らみ、モコモコと姿を変えていく“待つ時間”まで楽しめるのが、記憶に残ったようだ。
商品開発を担当した永谷園マーケティング本部の新海裕子さんによると、再販を求める声には「また食べたい」という思いに加え、「子どもの頃に作った記憶」や「家族との時間」をつづったものも多かったという。
ただし、今回の復活は昔の商品をそのまま戻したわけではない。時代に合わせて進化した点もあり、その一つが「ふっくら感」。以前は時間がたつと固くなりやすい課題があったが、今回は冷めてもふっくらした食感を味わえるよう改良した。
では、なぜ今モコモコのような手軽なお菓子が求められるのか。背景には、ここ数年で広がる「確パ」(確実なパフォーマンス)という考え方がある。タイムパフォーマンス(タイパ)やコストパフォーマンス(コスパ)に続く言葉で、「手間をかけなくても、期待した結果が得られる」という価値を指す。
忙しい毎日の中で、本格的なお菓子作りに時間をかけるのは簡単ではない。一方で、「子どもに作る楽しさを体験してほしい」という親の思いもある。
モコモコはその間を埋める存在になっている。短時間で完成するだけでなく、「自分で作った」という満足感も得られる点が、今の親子のニーズに合っているようだ。
もう一つ、今回の復活で変えなかったものがある。パッケージだ。新商品として考えればデザインを一新する選択肢もあったが、永谷園は当時のデザインを残すことにした。
理由は「あ、あのモコモコだ」と思い出してもらうためだ。久しぶりに見るパッケージは、味だけでなく、当時作った時間や体験までよみがえらせる。今回の復活では“懐かしさ”も残した。
12年ぶりに戻ってきた小さなカップケーキは、復刻商品にとどまらず、令和のおやつとして定着するのだろうか。
ちなみに、昔のお菓子作りといえば、小麦粉をこぼし、ボウルを洗い、最後はなぜか親が片付ける――というところまでが定番だった。今のモコモコなら、卵1個と電子レンジだけだ。
もしかすると、復活を待ち望んでいたのは、当時モコモコを楽しんだ子どもたちだけではない。作る楽しさはそのままに、手間は減らす。そんな進化に、大人たちの満足度も“モコモコ”と膨らんでいるのかもしれない。