
サンケイ2号君が名古屋駅10番線の謎を解いている間に、長野行き特急しなの7号がしずしずと入線してきた。
われわれ4人は、じっくりと入線風景を見届けた後、グリーン車である1号車の1A~D席に陣取った。休日におっさん4人がずらりと、運転室すぐ後ろのかぶりつき席にウキウキと座っている図は、他人が見れば気持ちの良いものではないが、ご同乗の皆さま、見なかったことにしてください。
「しなの」に使用されている383系電車もデビューから30年以上が経った。車内は青とグレーが基調で、JR東海らしく質実剛健で洒落っ気がない。
その代わり?かつて「ワイドビューしなの」と名乗っただけあって運転台の天井近くまで曲面ガラスが広がり、前面展望をダイナミックに楽しめる。
「3次元曲面ガラスという1枚の大型ガラスを使っていて、裏側に黒色フィルムを貼ってメリハリをつけているんです」 そんな特等席をとれたのも次元さん(仮名)が、10時打ちにチャレンジし、見事仕留めてくれたおかげである。
なぜいま、そこまでして383系「しなの」に乗るのか。3年後に新型振り子式電車385系の導入が決定し、別れのときが近付いてきたからだ。
「まだ3年もあるじゃないか」という方は、まだまだ甘い。3年なぞあっという間である。しかも引退が近づけば、特等席の入手が困難になるのは、目に見えている。慌てて臨終間際に駆け付けるのは、われわれの流儀ではない。
383系と385系の違いを2号君が滔々と語る前に、そもそも振り子式電車とは何か、をお知らせせねばなるまい。
平野部が少ない日本では、山間を走る路線を中心にカーブが多く、なかなかスピードアップができなかった。ならばカーブで自動的に車体を内側に傾斜させ、遠心力を抑えて高速化を図ろうと、日本初の振り子式電車として381系電車が開発され、昭和48年、中央西線を走る特急しなのに投入された。
ところが、これがよく揺れた。遠心力に合わせて車体が傾く際、体が左右に振られる横揺れが発生し、乗り物酔いする乗客が続出。しなのに続いて導入された伯備線の特急やくもには、「はくも」というありがたくないあだ名までついた。
カーブ通過時の車体傾斜にコンピューター制御を取り入れ、不自然な揺れが格段に少なくなった。鉄道愛好家の私でさえ、二日酔いの日は、381系に乗りたくなかったが、383系はそうではない。
しなの7号は、10時ちょうどに出発進行。すかさず、次元さんがアレを持ち出したところで、続きは明日のこころだぁ! (コラムニスト 乾正人)
(注)サンライズなど人気列車の指定席券確保のため、発売が開始される乗車日1カ月前の午前10時きっかりに「みどりの窓口」で、駅員に発券手続きをしてもらうこと。「みどりの窓口」の減少などで、10時打ちそのものが困難になっている。