
中古車販売店で働く新人社員・槇島ユズさんは、ある日訪れた地味な女性客にトルネオユーロRを衝動買いさせてしまった。ユズさんは当初、ただ名車を愛でるつもりで店頭に立っていたが、VTECエンジンの魅力を熱く語るうちに客の心をつかんだ。この出来事は、ユズさんが「売りたくない」と願う本音とは裏腹に、再び一台の名車が店を去る結果となった。
ユズさんは、自らを「名車オタク」と称し、特にホンダのVTEC機構に強いこだわりを持つ。彼女のトークは専門用語を交えつつも、初心者にもわかりやすい比喩で展開される。「VTECの切り替わりは、まるで魔法のようにエンジンの息吹が変わる」と語るユズさん。その熱意が、初めて来店した客にも確実に伝染する。
購入した客は、当初トルネオユーロRを「掃除機みたいな名前」と笑っていたが、ユズさんの説明を聞いて一変した。VTECが高回転域で生み出す力強い加速感や、直列4気筒エンジンの官能的なサウンドに惹かれ、試乗後すぐに契約書にサインしたという。「自分でもなぜ買ったかわからない」と後日ユズさんに語った客は、今ではすっかりホンダ党になった。
トルネオユーロRは2000年代初頭に販売されたホンダのスポーツセダンで、タイプR譲りの高出力エンジンと軽量ボディが特徴だ。中古車市場でも根強い人気を誇り、VTECファンにとっては垂涎の的である。ユズさんは「こんな名車がどんどん売れていくのは悲しいが、買い手が大事にしてくれるなら本望」と複雑な胸中を明かす。
このストーリーを綴るのは、セダンを愛する漫画家の朝戸さん。ユズさんのように、自身の趣味を仕事に活かす若者たちの姿は、多くの読者の共感を呼んでいる。今後もユズさんは、売るたびに心を引き裂かれながらも、VTECの魅力を語り続けることだろう。
No Comments