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サンリオのキャラクター人気が、いま静かに“世代交代”ならぬ“回帰”を見せている。老若男女に親しまれてきた同社のキャラクターたちの中で、とりわけ近年、昭和から平成初期に誕生した面々の存在感が増している。店頭のグッズ売り場やSNSのタイムラインを眺めれば、どこか懐かしい顔ぶれが当たり前のように登場する。
その象徴的な出来事が、今年の「サンリオキャラクター大賞」だ。1996年にデビューし、今年で30周年を迎えた「ポムポムプリン」が、700万票を超える票を集めて2年連続、通算5度目の頂点に立った。また、1989年生まれの「あひるのペックル」も前年の10位から6位へと順位を上げるなど、昭和・平成初期に生まれたキャラクターたちが改めて脚光を浴びている。
特に目を引くのが、バッドばつ丸、ポチャッコ、あひるのペックル、けろけろけろっぴ、タキシードサム、ハンギョドンの6体で構成するユニット「はぴだんぶい」の躍進だ。メンバー全員が15位以内にランクインし、ユニット名に込めた「V字回復」を現実のものとした。SNSを軸にした地道な活動が、確実に支持を拡大しているようだ。
なぜ今、昭和や平成初期に生まれたキャラクターたちが、再び注目を集めているのか。背景には何があるのか。ポムポムプリンを担当する山本彩さんと、「はぴだんぶい」のプロデューサーを務める阿部兼也さんに、その戦略と哲学を聞いた。
SNSが変えた、キャラクターとの“出会い方”
「以前は文房具などのグッズがキャラクターとの主な接点でした。しかし今では、SNSをきっかけにキャラクターを知り、ファン同士が交流したり、自ら魅力を発信したりする機会が大きく増えました」と山本さんは語る。
企業が一方的に情報を発信する時代は終わった。今やファン自身がキャラクターの魅力を語り、それを共有することで、新たなファンが生まれる循環ができている。この積み重ねが、幅広い世代からの支持につながっているという。
「昔からのファンがSNSでキャラクターの魅力を発信し、それを見た若い世代が新たなファンになる。その流れが大きくなっています」(山本さん)SNSの普及によって、キャラクターの「内面」に触れる機会が格段に増えたのも大きい。かわいい見た目だけでなく、どんな性格で、どんな価値観を持っているのか。ポムポムプリンののんびりした性格や、はぴだんぶい6体それぞれの個性まで、日常的に発信されるようになったのだ。
阿部さんは「以前は商品に描かれるキャラクターとして認識されることが多かった。しかしSNSによって性格や魅力まで伝えられ、応援したい存在、愛着を持てる存在へと変わってきました」と説明する。
「レトロブーム」はあくまで入り口、軸にあるのは「キャラクターらしさ」
昭和レトロや平成レトロのブームが、この人気を後押ししているのは間違いない。サンリオもそのトレンドは認識している。ただ、それ以上に重視しているのが、各キャラクターの「ブランドアイデンティティー」、つまり“そのキャラクターらしさ”だ。
「キャラクターがファンのどのような気持ちやニーズに応える存在なのかを大切にしています。SNSでの発信や商品開発も、そのブランドアイデンティティーを軸に進めています」(山本さん)レトロブームは、その価値をより多くの人に届けるための「入り口」の一つに過ぎないという。
「世の中の関心事やトレンドには常にアンテナを張っています。しかし流行に合わせることが目的ではありません。キャラクターの本質的な魅力を伝えるための切り口として活用しています」と山本さんは強調する。年代や国・地域によって好まれる色やデザインは変わるが、「キャラクターが大切にしている部分は絶対になくさない」というのが、揺るぎない方針だ。
30周年のポムポムプリンに込めた「現代へのメッセージ」
今年30周年を迎えたポムポムプリンは、従来の黄色一辺倒だったデザインを、パステルカラーやモノトーンなどにも広げ、幅広い層に手に取りやすい工夫を凝らす。その一方で、周年テーマの「むずかしいこと、しらんぷりん♪」には、現代を生きる人々への優しいまなざしが込められている。
「SNSや仕事で忙しい毎日を送る人たちに向けて、“たまには考え過ぎず、ポムポムプリンのようにのんびり過ごそう”というメッセージを込めました」と山本さん。「ポムポムプリンらしさは変えず、今だからこそ共感してもらえるメッセージを意識しました。昔からのファンも新しいファンも置いていかない内容になるよう、議論を重ねました」と振り返る。
「ポムポムプリンを見て肩の力がふっと抜けるという魅力は、日本だけでなく世界共通なのではないか」。山本さんはそう話し、海外拠点とも意見を交わしているという。30周年イヤーには国内外でさまざまなイベントや商品展開を予定しており、9月には横浜赤レンガ倉庫で大型イベント「ポムフェス」を開催する。
「らしさ」を守りながら、届け方を変える。世界への可能性
はぴだんぶいも、世界展開を視野に入れた活動を進めている。TikTokでは、言葉に頼らなくても楽しめる動画を意識して制作し、海外ユーザーにも伝わるコンテンツづくりに注力。その結果、日本以外の地域でも再生数が伸びるなど、手応えを感じ始めているという。
「キャラクターごとに人気の地域は異なります。ユニットとしての強みを生かしながら、世界中のファンと出会える可能性を広げていきたい」と阿部さんは語る。
昭和や平成初期に生まれたキャラクターたちが再び元気な理由。それは単なるノスタルジーに乗った流行ではない。SNSという新たな表現の場を得て、キャラクターたちの「らしさ」が現代の感覚と自然に結びついた結果と言えるだろう。流行に追従するのではなく、守るべき本質を守りながら、届け方を時代に合わせて変化させる。そのバランス感覚こそが、世代を超えて愛される理由なのかもしれない。今後、その「らしさ」が世界でどのような共感を呼び、新たなファンを生んでいくのか。サンリオの次の一手からも目が離せない。