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熊本地震の発生から10日あまりが経過した。連日続く余震や断水、避難所生活の長期化に伴い、被災地では今後、目に見えにくい形で健康被害が広がる恐れがある。医師たちが警鐘を鳴らすのが「見えない医療危機」だ。過去の大災害の研究では、被災後に脳卒中の発症リスクが最大1.62倍に上昇したとの報告もある。
東日本大震災の被災地を対象とした研究では、震災後に脳卒中の発症リスクが最大1.62倍に上昇したことが明らかになっている。特に高齢者は、避難所での生活による運動不足や水分摂取の減少、強いストレスなどから血圧が変動しやすくなる。熊本県内でも、地震後に体調不良を訴える高齢者が増えているといい、その数字は被災地の医療現場で今まさに現実のものとなりつつある。
さらに、誤嚥性肺炎のリスクも高まっている。避難所では慣れない環境での食事や、十分に噛み砕けないまま慌ただしく食べる場面が増える。嚥下機能が低下した高齢者にとっては、食べ物や唾液が気管に入り込み、肺炎を引き起こす危険がある。加えて、気温が上昇する日中は、避難所の衛生環境や換気不足も相まって、熱中症の発生リスクも無視できない。
こうした事態を受け、熊本県内の医療機関や医師会は避難所への巡回診療を強化している。被災地では通常の医療機関の機能が制限される中、医師や看護師が避難所を回ることで「見えない患者」の発見に努めている。早期の兆候を捉えて重症化を防ぐとともに、地域の薬局と連携して持病の薬が途切れないよう、必要な患者に薬を届ける体制も整えられつつある。
それでも熊本が「負けない」理由がある。それは、地域に根付いた医療ネットワークと、住民同士の助け合いの力だ。熊本県は過去に幾度も災害を経験し、その教訓を生かした防災・医療体制の整備を進めてきた。医師は「熊本は決して負けない。医療者と住民が一体となって、この困難を乗り越えられる」と強調する。被災地の未来を支えるのは、目に見えない医療危機を防ぐ、この連帯の力にほかならない。