
任天堂の映像事業が、ゲーム機ビジネスを支える新たな柱として存在感を増している。人気ゲーム「スーパーマリオ」を原作にしたアニメ映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」が4月24日に日本公開され、早くも前作に続くヒットが確実視されている。同社が長年掲げてきた「任天堂IP(知的財産)に触れる人口の拡大」という方針が、着実に成果を上げていることを示す結果だ。
2023年に公開された1作目「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、ゲーム原作映画として過去最高となる全世界累計興行収入約13億ドル(約2千億円)超を記録。今作も、公開から3日間(4月24~26日)で約16億円(興行通信社調べ)の興行収入を上げ、世界での累計はすでに1300億円を突破した。映画そのものの収益だけでなく、ゲーム機やソフトの販売促進効果にも期待がかかる。
古川俊太郎社長は前作公開直後の決算説明会で、「より重要なのは映画をきっかけにマリオのゲームにも関心を持っていただき、ハードやソフトの販売に対してポジティブな影響が生まれること」と述べ、映画を一時的な収益源ではなく、ゲーム事業全体を押し上げる触媒と位置づけている。実際、前作公開後はマリオ関連商品の売り上げが伸び、家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けオンラインサービスで遊べる過去作の利用も増加したという。
任天堂は10年以上前から「任天堂IPに触れる人口の拡大」を掲げ、ゲーム機以外の接点を増やしてきた。スマートフォン向けアプリやキャラクターグッズに加え、直営店、日米のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」内のエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が代表例だ。映画はこうしたIP展開の延長線上にあり、1作目の成功が戦略の有効性を証明した形となる。
成功の要因は、ゲームの世界観を忠実に再現した制作姿勢にある。マリオの生みの親である宮本茂氏が1作目から制作に携わり、横スクロールの画面構成や歴代ゲームのアイテム、音楽を想起させる演出を随所に盛り込んだ。宮本氏は昨年11月の経営方針説明会で映像制作に踏み出した理由について、「任天堂が次に資産として長く持ち続けられる娯楽体験を考えた結果」と説明。従来こだわってきたゲームの双方向性に加え、「受け身のメディア」である映像に領域を広げることで、世界中の人に長く愛される任天堂らしい娯楽を目指す考えを示した。
今作が特に注目されるのは、昨年発売された新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」の普及期と重なるためだ。スイッチ2は製造コストの高さが課題で、生成AI需要の拡大によるメモリー価格高騰がさらに採算を圧迫すると懸念される。一方、2027年5月には「ゼルダの伝説」の実写映画も控えている。映像戦略は着実に前進しているが、その成果をスイッチ2の長期的な成長に結びつけられるかどうかが、次の焦点となりそうだ。(桑島浩任)