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建設現場の熱中症対策が大きな転換期を迎えている。今年4月に改正労働安全衛生法が本格施行され、建設会社は委託先の作業員や一人親方も安全管理の対象としたためだ。業界では深刻な人手不足も続いており、身体を冷却するベストの導入や作業時間の調整などで、熱中症対策と生産性の両立を目指す動きが加速している。
改正安衛法は4月から、建設業や製造業の企業に対し、安全管理責任の範囲を拡大。従来は自社従業員が中心だったが、委託先の従業員や個人事業主である「一人親方」も保護対象に含まれた。これを受け、各社は夏場の本格的な暑さを前に、現場で働く全員を守るための熱中症対策を急ピッチで進めている。
大東建託は2026年度の熱中症対策費として、前年度比約1.7倍の約1.5億円を計上した。安全品質管理部の井高賢部長は「現場で働く全ての人を保護する大転換期」と位置づけ、費用増額の意義を強調する。
同社の具体策の一つが、吸熱効果のある特殊部品で身体を直接冷却しながらファンを回す「ペルチェ式ベスト」の新入社員への配布だ。このベストには皮膚の上昇温度を0.5度抑える効果が確認されている。
また、強制換気機能とミストファンを備えたトイレを東京都内の2カ所の現場に試行導入。熱や臭いがこもるのを防ぐ効果を検証している。実際に現場で働く女性作業員は「トイレ環境が改善されてうれしい。ここ数年で作業員の熱中症への意識は高まり、各自で休憩を呼びかけている」と語る。
同社が管理する登録作業員は約15万人。うち65歳以上は約7000人に上る。加齢に伴う身体能力の低下をデータで示す教育も進めており、井高氏は「安全第一であり、工期優先は絶対にない」と断言した。
ハウスメーカー大手の積水ハウスは、全国の建設現場を対象に昨年開始した「現場クールプロジェクト」を今夏から拡大。エアコン完備の移動式休憩スペース「ひんやりBOX(ボックス)」を設置し、作業員の快適な休憩環境の整備を急いでいる。
作業時間そのものを前倒しするのは大林組だ。熱中症リスク低減のため、条件が整った現場で7~8月の作業時間を「午前7時~午後1時」に変更する。標準的な午前8時~午後5時を改め、気温と暑さ指数(WBGT)が上昇する前に作業を終える狙いがある。
工程に影響が出る場合は、気温の低い時期に作業を延長するなど年間を通じて調整するという。担当者は「約180以上の現場で展開予定。状況に応じて柔軟に運用し、発注者の理解を得ながら進めたい」と話す。
各社の対策について、熱中症対策アドバイザーの山下太郎氏は「非常に効果的で時間帯の前倒しも理にかなっている」と評価する一方、「生活リズムに合わせた体調管理の呼びかけや気温に応じた対策の切り替えも不可欠だ」と指摘。熱中症は作業員自身の初期対応への理解が重症化を防ぐ鍵となる。