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“疲弊しないDX” Webだけで年間141件の車検依頼が来るガソリンスタンドの戦略

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Kenji Watanabe
経済 - 12 6月 2026

地域密着型のサービスステーション(以下、SS)として、ガソリンスタンド事業に加え、車検や板金塗装、中古車査定・買取などの油外サービスを手掛けてきた金澤石油(千葉市)。しかし、その集客は長年、現場スタッフの経験や営業力に依存しており、安定的に成果を生み出す仕組みづくりが課題となっていた。

そこで同社は、「車検」「板金塗装」「中古車査定・買取」を油外収益の3本柱と位置付け、WebサイトとSEOを活用した集客戦略へとかじを切った。目指したのは、スタッフによる店頭での声掛けに頼るのではなく、顧客自身がサービスを見つけ、相談・予約できる状態だ。

その結果、自社の車検専用Webサイト経由で2025年4月から2026年3月までの1年間に141台の依頼を獲得し、約465万円の収益を創出。新規顧客比率は98%に達した。なぜ地域のガソリンスタンドで、こうした成果を生み出せたのか。金澤石油の金澤典明社長と、同社の取り組みを支援したイグニッション(東京都新宿区)の谷崎景一社長に話を聞いた。

金澤石油がデジタル化に取り組む以前は、車検をはじめとする油外サービスの集客は、店頭での声かけと既存顧客への提案が中心だった。

例えば、給油や洗車で来店した客に車検時期を確認したり、季節に応じてエアコン点検やスタッドレスタイヤの交換を提案したりしていた。洗車客は会員化して情報を取得し、DMや電話でフォローするなど、いずれも、スタッフが顧客と直接やり取りしながら油外サービスにつなげていく、アナログな店頭活動だった。

「現場スタッフの努力で成果は出ていました。一方で、どうすれば安定的に新規顧客を獲得できるのか、どの施策がどれだけ成果につながっているのかは把握しきれていませんでした。その日その日で声をかけ、目の前の売り上げを積み上げる『狩猟民族的な経営』だったと思います」(金澤氏)

最大の課題は、売れるスタッフが中心となって動き、周囲がその判断に頼る構造になっていたことだ。

こうした属人化の弊害は、車を販売した後のアフターフォローにも表れていた。担当スタッフしか顧客の状況を把握していないため、別のスタッフが次の提案をしようとしても、適切な対応が難しかった。本来なら成約できた車検や買い替えの機会を取りこぼしてしまっていた。

結果として、顧客を多く抱えるスタッフに販売やフォロー、クレーム対応が集中。さらに、その姿は他のスタッフにも影響を与えていた。特定のスタッフが高い成果を上げる一方で、「自分には難しい」と諦めてしまう人もおり、成長意欲が生まれにくくなっていたという。中には、社員になることを「責任と負担が一気に増えるもの」と捉えるアルバイトもいたという。

金澤氏は「売り上げ自体は作れていたが、それは会社の仕組みによる成長ではなく、個人の頑張りに頼った不安定なものだった」と当時の経営への違和感を語る。

2022年に金澤氏が社長に就任すると、この違和感は危機感へと変わっていった。

「どれだけ売り上げを作っても、その場の努力で数字を作っているだけで、顧客情報やノウハウといった資産が社内に蓄積されない。せっかく作った数字が、穴から抜け落ちていくような感覚がありました」(金澤氏)

そこで目指したのが「農耕民族的な経営」への転換だった。顧客との関係を継続的に構築・維持しながら、長期的な価値提供につなげていく。そのためには、個人の経験や勘に依存するのではなく、顧客情報やノウハウを組織で共有し、誰が担当しても一定の品質で対応できる仕組みが必要だった。

業務の仕組み化を進めるにあたり、金澤氏はイグニッションに相談を持ちかけた。同社の谷崎氏は、約10年にわたりガソリンスタンド業界に携わってきた。現場スタッフ経験に加え、約2000店舗の販促支援にも関わってきた。金澤氏とは前職時代から交流があったという。

谷崎氏との対話の中で、金澤氏が共感したのが「現場が無理なく運用ができて、売り上げにつながる“難しくないDX”をやりましょう」という考え方だった。「Webサイトであれば、どのページが見られ、どこから予約につながっているのかを可視化できます。そこに大きな可能性を感じました」(金澤氏)

そこで谷崎氏が提案したのが、自社サイトとSEOを軸にした集客だ。比較サイトへの登録やフランチャイズ加盟といった選択肢もある中、なぜこの方法を選んだのか。

谷崎氏は「比較サイトやフランチャイズは即効性がある一方、価格競争や手数料負担に巻き込まれやすく、自社の価値を積み上げにくい側面があります」と説明する。

目指すのは、外部媒体を活用し「魚を買い続ける」ことではなく、自社サイトの運営により「自分たちで豊かな漁場を持つこと」だと谷崎氏は話す。

「例えば、地域のお客さまが『千葉市 車検』と検索した際、金澤石油の価値が伝わるWebサイトがあれば、共感したお客さまが直接予約してくれます。その資産は一朝一夕にはできませんが、一度構築できれば長期的な競争力の源泉になると思いました」(谷崎氏)

今回の取り組みでは「車検」「板金塗装」「中古車査定・買取」の3つのサービスについて、デジタル上に集客導線を構築した。

谷崎氏は「全て自動車関連サービスですが、お客さまの依頼先の探し方や心理状態は大きく異なります。それぞれでお客さまが抱えるであろう不安や意思決定プロセスを踏まえて、訴求内容と導線を整えました」と話す。

同氏によると、「車検=比較検討型」「板金塗装=突発的な相談型」「中古車査定・買取=不安の大きい意思決定型」に整理できるという。それぞれの特性を踏まえ、どのような導線を設計したのか。

車検は有効期限が決まっており、誰もが定期的に受けなければならない。一方で、依頼先をあらかじめ決めている人は多くなく、「千葉市 車検」「車検 安い」「近くの車検」などと検索しながら比較検討するケースが多い。

谷崎氏によると、こうしたユーザーは価格だけでなく、「オプションは本当に必要な整備なのか」「後から追加費用が発生しないか」といった疑問も抱えているという。

そこで金澤石油は2025年4月に、Webサイト「カナザワあんしん車検」を公開。価格を訴求するのではなく、認証工場(一定の規模の作業場と作業機械、特定整備に従事する従業員を有する工場)であることや、国家資格を持つ整備士が対応すること、料金や整備内容を分かりやすく説明することなど、安心して依頼できる理由を記載した。また、スマートフォンから見積もり予約ができる導線も整備した。

結果、Googleの検索順位は「千葉市 車検」では3位、「千葉市緑区 車検」では2位を獲得。サイト経由での流入数は約1年で141件、収益は約465万円に上った。新規顧客比率は98%となり、これまで接点のなかった地域ユーザーへの認知拡大に成功した。

谷崎氏は「地域で安心して任せられる車検先を探している顧客との接点を作れたことが大きかった」と振り返る。

板金塗装は、日常的に検討するサービスではない。「車をぶつけた」「傷が付いた」「へこみが気になる」――そうしたタイミングで初めて情報収集を始めるケースが多い。加えて、相場も分かりにくく、保険を使うべきか自費で修理するべきかを判断しづらいため、「どこに相談すればいいのか分からない」と迷うユーザーも少なくないという。

そこで金澤石油は「まず相談できること」を重視した。2025年12月に公開した、Webサイト「カナザワあんしん板金」では、細かな料金表を提示するのではなく、傷の状態によって費用が変動することを前提に、LINE公式アカウントによるチャット相談や来店見積もりへの導線を整備した。施工事例や顧客の声を掲載し、「この程度の傷でも相談してよいのか」というためらいを解消することを意識したという。

その結果、2026年4~5月の2カ月間で15件の案件を獲得し、収益は147万円を超えた。

車検や板金塗装と比べても、心理的ハードルが高いのが中古車査定・買取だ。「安く買い叩かれないか」「しつこく営業されないか」「査定額の理由が分からない」など、特に初めて車を売る人にとっては判断材料が少なく、不安も大きい。一括査定サイトを利用することで「複数社から一斉に電話が来ること」に抵抗を感じる人も少なくないという。

「車を売るという行為は、お客さまにとって大きな意思決定です。だからこそ、単に高く買い取るという訴求だけではなく、『納得して売却できる』『安心して任せられる』という体験を作ることを意識しました」(谷崎氏)

2026年5月に公開したWebサイト「カナザワあんしんクルマ買取」では、「地域の会社に安心して相談できること」を打ち出した。24時間365日の予約受付や査定理由の丁寧な説明、無理な勧誘をしないことを伝えることで、女性や初めて査定を依頼する人でも相談しやすい環境づくりを進めた。サイト公開から1カ月だが、商談2件、成約1件と成果が出始めている。

それまでの現場はアナログな対応が中心だったが、デジタル化は受け入れられたのか。金澤氏は「業務負担が大きく増えたという感覚はありません」と話す。

増えたのは、サイト経由の問い合わせや予約通知メールを確認し、必要に応じて返信することくらいだという。もともと車検や整備の予約は店舗側で管理していたため、Web予約が入っても大きな運用変更は必要なかった。

むしろ運用では楽になった面もあるという。「これまではスタッフが店頭で声をかけたり電話でフォローしたりして予約につなげていましたが、サイトを見たお客さまが自分のタイミングで予約してくれるようになりました。現場は『予約を取りにいく』から『予約に対応する』形に変わりました」(金澤氏)

ただ、デジタル化に向けて全く不安がなかったわけではない。かつて車検比較サイトを利用していた際には、価格や特典を基準に車検先を選ぶ顧客への対応に苦労した。その経験から、現場には「Webから来る客は大変なのではないか」という印象が残っていたからだ。

しかし、自社サイト経由の来店客は、会社の考え方やサービス内容、スタッフの雰囲気を理解したうえで予約しているケースが多かった。価格だけで比較するのではなく、金澤石油に対して安心感を持って来店する顧客が増えたことで、現場が抱いていた不安も自然と薄れていった。

新規顧客をリピーターにつなげる取り組みも進めている。現場では、見積もりから入庫、納車までできる限り同じフロントスタッフが対応をする。女性客には女性スタッフなど、初めて利用する顧客の不安を減らす工夫を重ねている。

さらに、来店後には感想や意見を尋ねるメールを配信し、集まった声を店舗内で共有してサービス改善に活用している。また、作業完了から10日を目安に「その後、お車の調子はいかがでしょうか」と連絡を入れるなど、納車後のフォローも欠かさない。

こうした取り組みの結果、客層にも変化が生まれた。以前は50~60代がメイン顧客だったが、Web経由で20~40代や女性の利用者が増加。既存顧客からも「Webサイトを見たよ」「車検もやっているんだね」といった声が寄せられ、店頭での引き合いも増えたという。

「車検については年間141台、収益が約465万円という成果も大きいですが、それ以上に、新しい客層との接点が生まれ、会社の可能性が広がったことが一番の実感として大きいです」(金澤氏)

金澤石油が掲げるのは、「車検」「板金塗装」「中古車査定・買取」の3本柱で、Web起点の年間収益1500万円という目標だ。ただし、金澤氏はこれを最終ゴールではなく、あくまで今期の通過点だと位置付けている。

次なる課題は、問い合わせや予約が増えても接客の品質を維持することだ。属人化を防ぐため、受付や見積もり対応のマニュアル化を進めるほか、特定のスタッフに対応が集中しない体制づくりにも取り組んでいる。

中古車査定・買取についても、現在活用している一括査定サイトへの依存を減らし、将来的には自社サイトに集約していく考えだ。

さらに力を入れるのが、修理事例や対応事例の蓄積と発信である。特に板金塗装は仕上がりが見えにくいサービスだからこそ、事例そのものが信頼につながる。

「重要なのは、一時的な集客施策で成果を追うことではなく、地域のお客さまとの接点を継続的に増やしていくことです。SEOやMEOの強化に加え、検索行動や問い合わせデータを分析しながら改善を重ねることで、地域に選ばれ続ける仕組みを育てていきたいと考えています」(谷崎氏)

編集部注:この記事はAIを使用して作成されており、産経新聞の記事を元に、内容を変更せずにリライトしたものです。
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