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国内で老朽化したマンションの再生が深刻な課題となっている。建築基準法改正前の旧耐震基準で建設されたマンションが耐用年数を迎える一方、建て替えはほとんど進展していない。政府は4月に改正法を施行し、建て替えに必要な要件を緩和する対策を打ち出したが、所有者の費用負担などの高いハードルが立ちはだかり、再生への明確な道筋はまだ見えていない。
国土交通省のデータによると、「老朽化」の判断基準の一つである1981年の建築基準法改正より前に建てられた「旧耐震マンション」は、2024年末時点で全国に約103万戸存在する。しかし、マンション全体の建て替え実績は、2025年3月末時点で累計323件、2万6000戸にとどまっているのが実情だ。
築40年以上の高経年マンションも、2024年末時点の148万戸から、20年後の2044年には483万戸まで急増すると国交省は試算する。大規模災害時に被害拡大のリスクが高く、早期の対応が社会的な要請となっている。
マンションの建て替えが停滞する主要因の一つが法的なハードルだった。そこで政府は昨年、区分所有法を改正し、今年4月に施行した。建て替えに必要な所有者の賛成比率を、耐震性などの課題がある場合に従来の「5分の4以上」から「4分の3以上」に引き下げるなど、合意形成を促進するルールに変更。特に小規模なマンションで効果が期待される。業界関係者は「法改正をきっかけに建て替えは増えるだろう」と期待を寄せる。
不動産デベロッパーなども建て替えを積極的に推進している。日鉄興和不動産は今年5月、築59年のマンション「高輪ビル」(東京都港区)の建て替えについて、区から計画の認可を取得した。1981年の建築基準法改正前に建設された旧耐震建築で、漏水事故も頻発していた。所有者の中には建て替えに消極的な人もいたが、日鉄興和が個別説明会や建て替え中の住居確保支援などを行い、合意形成を成功させた。
同社によると、建て替えの相談は年々増加傾向にある。担当者は「旧耐震期のマンションは(最も新しくても)築45年前後となり、設備更新が必要だ」と指摘する。
しかし、国交省によると建て替えに必要な所有者の負担は平均で1戸当たり約2000万円に達する。工事中の仮住まいの家賃や引っ越し代なども加わり、この多額の費用を捻出できる例は多くないのが現状だ。
建て替えを機に戸数を増やし、その販売収益を工事費に充てることで負担を軽減する方法もある。だが、現状以上に床面積を増やせない物件や、販売価格が伸びにくい郊外の物件などではこの手法も難しい。
旭化成ホームズ・マンション建替え研究所の重水丈人所長は、建て替えが進まず放置されて無人マンションが発生する事態になれば「行政が解体することになり、自治体の負担増につながりかねない」と警鐘を鳴らす。老朽化が深刻化する前にさらなる対策を講じることが急務だ。(根本和哉)