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行けども行けども目的地に着かない。境内を出た時、タクシーを呼んでおけばよかったと悔やんでも、後の祭りだ。
出雲大社を参拝した後、次なる目的地は旧JR大社駅だった。この駅は、出雲市駅と大社駅を結ぶ大社線の駅で、JR発足直後の平成2年に廃線となった。学生時代に乗ろうと思えばいつでも乗れたのに乗らなかった。筆者の青春は後悔だらけだ。
廃線後、駅舎は取り壊しもあり得たが、地元の大社町(現出雲市)が跡地を国鉄清算事業団から買い取り、保存したのだ。
大正13年竣工の和風社寺風建築の大社駅が、廃駅後に重要文化財に指定されたのは、地元の熱意あってのことだ。
重要文化財の駅舎は東京駅と門司港駅のみで、和風建築はここだけ。大社駅は5年かけて大改修され、再オープンしたばかり。これは見に行かねばと、大注連縄から歩くこと二十数分。5月なのに夏のように暑い。
「どうやら菅田庵の狐に化かされたようですね」と、汗だくのサンケイ君がつぶやいた途端、入り母屋造りの立派な駅舎が左手に現れた。
「有難い!」と駆け寄ると、なんと本日は水曜日で休館日。狐に一杯食わされた。
せっかくなので、閉ざされた玄関から中をのぞくと、大正ロマンの世界が広がっていた。当時の運賃表が再現され、待合室は広々、出札口も荘重だ。
気持ちを切り替え、次のお目当てへタクシーを呼ぶ。もちろん出雲そばだ。水曜日は出雲の安息日らしく休みの店が多かったが、駅近くの一軒が開いていた。
まずは「赤てん」で一杯。赤てんは、魚のすり身に赤唐辛子を練り込み、パン粉をつけて揚げた島根名物で、ビールにも地酒にも合う。野菜天ぷら付きの割り子そばや、酔い覚ましの宍道湖名物しじみ汁もしっかりいただいた。
サンケイ君が「釜揚げそば」を追加した。年長者として「食べ過ぎるともっと肥えるぞ」と忠告すべきだったが、少し分けてくれるというので黙認した。釜揚げそばは、釜揚げうどんのそば版。ゆでたそばを湯ごと丼に盛り、薬味とそばつゆを直接かけるシンプルなものだ。これがなかなかイケる。老いては子に従わねばならぬ。腹も満たされたところで、一畑電車で出雲市駅へ。アレの話は、明日のこころだぁ!(コラムニスト 乾正人)