
実の娘に対する性的暴行の罪に問われた元役員(54)の男について、最高裁は懲役8年の実刑判決を確定させた。親族間の性暴力は統計上も少なくないが、表面化しにくい犯罪として長年見過ごされてきた側面がある。今回の判決は、家庭内の密室で起きる罪に司法が厳正に対応した事例として注目される。
元役員の男は、自宅で実の娘に対し複数回にわたり性的暴行を加えたとして起訴された。一審・二審ともに懲役8年の判決を言い渡し、被告側の上告を最高裁が退けたことで刑が確定した。被害者の女性は、長年にわたる父からの虐待を告白し、「この判決でやっと解放される」と述べている。
犯罪心理学の専門家によれば、「親族間暴力の加害者には共通して、強い支配欲と『自分の子どもだから何をしてもいい』という歪んだ認知がある」という。「被害者を所有物とみなし、愛情と称した暴力を正当化する傾向が顕著だ」と指摘する。こうした認知の歪みは、家庭内での権力関係によって強化されやすいという。
被害者支援の現場からは、子ども時代に受けた性暴力の影響が成人後も長期にわたることが報告されている。トラウマ反応として、対人関係の困難や自己肯定感の低下、フラッシュバックに悩まされるケースが多い。専門家は、「被害者が声を上げるには、周囲の理解と安全な環境が不可欠だ」と強調し、社会全体での認知向上を呼びかけている。
今回の判決を機に、家庭内性暴力の実態がより可視化されることが期待される。裁判所は「親子関係の信頼を著しく損なう犯行」と非難した。加害の背景にある心理メカニズムの解明と、被害者を支える体制の整備が急務となっている。親族間暴力の根絶に向けた社会的な議論の深化が求められている。