
「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日成立し、法務省幹部が「やっと国際社会と協調できる」と歓迎するようにテロ対策は一歩前進した。ただ、同法は組織犯罪を対象にしている以上、個人のテロに対応することはできず、通信傍受の対象犯罪ともされていない。未然防止という点では実効性に疑問符が付く中で、捜査と人権のバランスを考慮しつつ、諸外国のような令状なしの通信傍受の在り方についても議論を始めるときに来ている。
「これほどがんじがらめに縛られた法律もない。実務面では、ほとんど意味がないだろう」と法案に携わってきた法務省幹部は率直に語る。ようやく国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結でき、日本も犯罪捜査上のメリットを享受できるが、別の法務省幹部は「要件が厳しく適用は困難」と指摘する。
捜査現場からは「テロ対策に資する法律だが、実は捜査の武器にはなり得ない。より慎重になるだろう」と検察幹部が述べるなど、実務面での有効性を疑問視する声が上がっている。要件の厳格さがかえって捜査の抑制を招く可能性も指摘される。
法案審議で民進党は、LINEやメールが監視され人権侵害につながると追及してきたが、テロ等準備罪は通信傍受の対象犯罪ではなく、これを理由とする監視はできない。のみならず、犯罪の嫌疑がなければ、尾行や張り込みをすることも許されない。
個人テロへの対応と犯罪前の通信傍受の在り方は、今後の法改正議論で焦点となるべき課題だ。政府は国際社会との協調を掲げる一方、国内の実効的な対策とのバランスをどう取るのか、本格的な議論が求められる。