
国の首都直下地震緊急対策推進基本計画の改定が12日に公表されたが、これを巡り東京都と国の間で認識の「ズレ」が表面化している。昨年12月に国が公表した被害想定に対し、東京都の小池百合子知事は「首都圏の実態を十分に反映していない」と、減災などの取り組みが考慮されていないと反発した。今回の基本計画の改定に対しても小池氏は「首都東京が『危ない』という誤ったメッセージとなりかねない」と懸念を示している。
「実態に即さない被害想定では自治体が必要な対策を講じることができない」
昨年12月、政府の中央防災会議作業部会が公表した被害想定を小池氏は厳しく指弾し、「国に対して今回の被害想定の検証を強く求めていきたい」と語った。
反論の背景には、都などがこれまで取り組んできた減災対策が織り込まれていないという認識がある。都からは、「対策を適切に評価せず、首都の強靭(きょうじん)化への意識も乏しい」との声も上がる。
都は独自の検討委員会を立ち上げ、今年5月には国の被害想定の分析結果を公表した。国に対し、事業者と連携して火力発電所の被害を軽減し迅速に復旧させることや、原子力発電所の運転再開など柔軟な運用、広域的な電力融通など具体的な対策の強化を求めた。
都は減災対策も強調している。耐震化率は平成24年の81.2%から令和4年には92.0%に。建物全壊は約33%減少し8万棟、揺れによる死者も約37%減少の3200人になるとした。
木造住宅の密集地域も約1.6万ヘクタール(平成24年)が0.86万ヘクタール(令和3年)に減少し、焼失棟数は4割減の12万棟、火災による死者も39%減の2500人に減らせると説明した。
令和6年度末時点の耐震化率は93.4%だが、17年に耐震性が不十分な住宅をおおむね解消。揺れを感知する「感震ブレーカー」設置率を6年度末の13%から12年に25%まで高め、死傷者や物的被害を抑制するとしている。
都は今年度中にライフライン、避難者、帰宅困難者について新たな被害想定を固める。小池氏は「東京への集中投資は減災効果が極めて高い。都はもとより国も積極的な対策、投資を行うべき」としている。小池氏は12日、国の緊急対策推進基本計画について、東京圏への集中を踏まえた国土のあり方や、首都中枢機能の代替拠点の確保が検討課題に盛り込まれているとし、「災害リスクをことさらに強調し、『東京が危ない』という誤ったメッセージになりかねない」と批判した。(中村昌史)